無計画なる放浪者 part6 ページ38
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そして、何日も暗闇の中にいた。
天使に寿命はないが、死という概念は存在する。だからユウは、そこから抜け出せないと思っていた。
だけれども――ユウは暖かい何かに抱きしめられ、背中を優しく撫でられていた。あたかも壊れた心を癒すかのようなそれにひどく安心した。
いつしかユウは、それが何かを知りたくなった。何かはわからなかったが、優しい感覚はあまりにも心地よくてずっとそこにいたかった。
意識が戻ったのがいつなのか、記憶は曖昧だ。目を開けると自分は誰かに抱きしめられていて、心地良さに再び眠りにつく。それを何度も繰り返した。
どれだけ覚醒しては眠ったのだろうか。ある時に、抱きしめているのはアイリだと気がついた。
アイリが何故? そう思わなかった訳では無い。しかし彼は言葉を発さなかった。それだけで自分が怯えると思ったのだろうか。
しかし、アイリのおかげで自分は戻ってこられたのかもしれなかった。
「アイリ……?」
掠れた声で呼ぶと、アイリは安堵したように微笑んだ。
それからは、目を覚ますことが多くなった。彼のことを認識していても、我を忘れることはなくなった。
ただ、あまりにも辛い制裁は、あまりにも深いダメージを心身に与えたのだろう。ユウは熱と悪夢に苛まれた。
自分を支えるように、ユウの手を握ってくれていた。アイリはいつもそばにいて、自分が狂わせかけた癖にとても優しかった。
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作者名:ゼファー | 作成日時:2021年1月14日 13時