【オリジナル/BL】悪魔の翼 (ページ30)

今日:3 hit、昨日:1 hit、合計:10,054 hit

#8 愚者の妄言 part1 ページ30

.

　ピピピ、と無機質な音が、体温を計測したことを知らせた。三十八度一分。人間であれば熱だ。肉体の構造はほぼ人間と同じなのだから、彼は辛いことだろう。ユウはもう、一週間以上寝込んでいた。
　電源を切った体温計を見ながら、人間は面白いものを作るな、とアイリは思った。天使であるアイリから見ても、人間の方が余程摩訶不思議なものを作る。それが、アイリが天界に帰らなかったもう一つの理由でもあるが。
　人間界は面白い場所だった。その興味が発展して、アイリは『リヴィンチタ』なる名である所に絵を寄稿するようになった。今では収入源にもなっていて、アイリはそれで生計を立てていた。もう一人増えたくらいでは困らない程度には。
「完璧な計画だったはずなのになぁ」
　愛する気持ちと憎悪。二つが入り交じったまま、壊すために抱いたというのに――自分の方がハマってしまった、なんて誰に言えようか。
　あーあ。自分に呆れる。

　一緒にいて欲しいと願った時のことは、よく覚えている。困惑した表情の後、なんと言えばいいかわからないという視線をさ迷わせている姿は実に可愛かった。
　アイリはもう一押し。今晩だけ、という言葉を強調した。そして彼は承諾した。誠実な彼は、何のお礼もせずに帰ることは自分が許さなかったのだろう。分かっていてアイリが仕組んだことでもあった。
　かくして、彼は見事に罠にかかった。人に触れられることに慣れていないユウの反応はあまりにも可愛かった。
　手放したくないと、そう思えるほどに。
　でも、明日になればユウちゃんは帰っちゃうんでしょ？また戦場に言ってしまうんでしょ？
　彼の性格は嫌という程理解していたし、それならいっそのことここに縛り付けてしまえばいい。
　壊すつもりでいたから、ユウの武器の一つである筋肉を適当に落としてやっていたのだが、目的が変わってもそれは正しい選択だったと思う。まだ成長しきっていない、靱やかな筋肉のついた身体も悪くなかったが。

.