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絶えず嗚咽と鼻をすする音の鳴り響くスタジアム内。
___横たわるAの横で、絶望がのそりと体を動かした。
体は半分消えかけている。しかしそれでも氷月は、虚ろな瞳で立っていた。
「・・・!!こいつ、まだ生きて___!!」
御影がそう零し、凪ごと引っ張ってAの遺体を遠ざけようとする。しかし懸念していた不意打ちでの攻撃、なんてことは起こらなかった。
氷月はただ血塗れの体で、芝生の上に足を着けて立っている。
・・・そして。
己の体から、紅く輝く角を引っ張った。
「ッは・・・?何してんのこいつ・・・!!」
騒然としたスタジアム内に、蜂楽の焦った声が響く。氷月はそれを意に介さずに、Aの元へ歩み寄る。
「・・・っなぎ、あぶな・・・___」
慌てて千切が凪のジャージの襟を引っ張った。思わずAの体から手を離してしまった凪は、そのまま千切の手によって後ろへ引っ張られる。
「・・・ぁ」
選手達の声に、小さな氷織の声が掻き消された。
氷月の手に握られた「鬼神の紅角」が、Aの心臓部に空いた穴に、深く深く、埋め込まれていく。
「ッ〜・・・!!!なっっっにしとんねんこの、アマあぁ!!!!」
ふと、烏の大声が選手達の耳をつんざいた。氷月の体が吹っ飛ぶ。烏がサッカー選手ならではのキック力の強さで氷月を思い切り蹴ったのだ。
氷月はそれっきり、跡形もなく消えてしまった。
「こればかりはナイスや烏くん゛・・・!」
ず、と鼻水をすすった氷織が、烏の背中をバシンと叩く。皆烏の行動に感心していたが、しかし。
「・・・___おわ、全員集結?」
呑気な声が、選手達に届いた。
「___・・・え、は?」
黒名がぽかんと口を開く。他選手たちも同様だった。
声の元へ視線を滑らせる。スタジアム内に集結した全員の瞳が、そちらに向いていた。
「・・・ウッソ」
パンダが思わず驚愕の声を零す。
だって、そこには___・・・。
「うおおぉぉぉ!!!A!!」
「生きてんじゃねえかAちゃん!最っ高だぜ!!」
一部の選手達がわあわあと騒ぎ出す。しかしまた一部の選手は、この光景が信じられないとでも言うかのような目でソレを見つめていた。
「え・・・えッ・・・!?ななな、なんでぇ!?」
「・・・あー、受肉、した・・・。」
焦る時光。真希とパンダはAの様子を見て、確信した。受肉している、Aの体に、鬼神が。
「お前、もしかして鬼神と縛り結んだか・・・?」
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神里浦飛(プロフ) - 面白くて一気読みしました!最後まで読んだ、と思ったら、番外編の千切りに爆笑させられました。楽しい時間をありがとうございます! (12月7日 20時) (レス) @page49 id: fb6d1b08bc (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - れんれんさん» 返信遅くなり申し訳ありません、コメントありがとうございます!最後に面白かったと言って貰えるよう頑張っていたのでその言葉が沁みます・・・(*´꒳`*) (4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
raiz(プロフ) - リィさん» コメントありがとうございます!ここまで読んで頂き感謝しかないです・・・!!返信遅くなって申し訳ない・・・。 (4月14日 21時) (レス) id: 83866824e4 (このIDを非表示/違反報告)
れんれん - 完結おめでとうございます!ほんとに面白かったです(*^ω^*)番外編待ってます!!! (4月9日 15時) (レス) @page45 id: 63496a6874 (このIDを非表示/違反報告)
リィ(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっげぇ面白かったです!ありがとうござました!!!お疲れ様でした!! (4月7日 8時) (レス) @page45 id: 1730b53d16 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:raiz | 作成日時:2023年3月25日 23時