一口サイズ【天喰×遠形】 ページ28
A視点
『今日は冷えるなあ〜』
ガヤガヤと賑わう繁華街の中私はそう呟く。
季節はもう冬に迫っていた。
今は夕方。あと少しで門限に迫るので早く帰らなくては。
まだ夜は老けていないのに、
気温は低く手はかじかんでしまうほど寒かった。
今日は休日。
足取り弾ませてながら私は
あっつあつの＜おでん＞が入っている袋を握りしめる。
早く帰ってみんなで食べるため、量は少し多め。
みんなの喜ぶ顔を想像してまた胸が弾み、
私は少し早歩きになっていた。
「いくら環でもこれは譲れないね！」
「み、ミリオ。周りの視線が痛いって…」
目を凝らせば寮が見えるほどの距離。
ミリオくんと環くんが話しているのが見えた。
おでんを冷やさないために早く帰りたいが……何か争っているのか？
まあ喧嘩ほどではないし、そこは安心だ。
彼らも寮に向かっているのか、私と行く道は同じ。
しかし話しているので歩くペースはだいぶ遅かった。
私が言ってはきっと邪魔になってしまう。
少し様子を伺おうと思い私は少し離れて歩くことにした。
「……俺だってAが＿＿なんだ、」
「だったら正々堂々勝負しようよ！」
一体私が何なんだ。
話の流れ的には、少し期待してしまうが。
ミリオくんが乗っているのならおそらく特訓方面だろう。
でもそれだったら環くんが乗ってくるには意外だ。
そんなにすごい特訓なのか？少し気になる。
そう考えながら再びおでんの袋を握りしめると
ミリオくんが立ち止まるのが見えた。
私と目が合う。
環くんは私に気づかなかったようで、
顔をほんのり赤くさせ驚いていた。
「仕方ないからさ、Aに決めてもらおうよ」
いやだから何を？？？
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
