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嫌な予感がする。
死とか、そんな生半可なものじゃない。
彼の口調は優しく、暖かいものだ。しかし奥底に澱む黒の気配が隠し切れていない。
洗脳しようとする様子は見れないが、
“入るのが当たり前”と言いたげな圧倒的なカリスマが作り出す雰囲気に飲まれそうだ。
早く、迎えにきてくれないか。
頭がおかしくなりそうだ。
「これは提案じゃないよ。君の出すような“命令”だ。
どうだい？“放送”だなんて甘えた名前はやめにしよう」
「君の個性はヴィラン向きだよ。
思い出してくれ。君に酷い言葉を投げかけた奴らの名前を」
「口の布を外してくれ。
……さあ、いうんだ」
男がそういうと、トガにより口の布が外される。
彼女は柔らかく笑って、私の耳元で【大丈夫です。受け入れてあげますから】と呟いた。
受け入れるだなんて嘘だ。私には帰る場所がある。
私には抱きしめて涙を流してくれる人がいるから、
死んでも、絶対に言ってやらない。
そう思いながら私は手を握りしめ、意識を別のところに移した。
「おい、早く言えよ」
腕を蹴られ、炎を出される。ミリオくんの褒めてくれた髪が焦げて、苦い匂いがした。
口を開かない私に苛立っているようだ。
「しょうがないね。強硬手段と行こうか。
……可哀想だが、入るのであれば止めてあげるさ」
「エ〜本当にやるんですか？ついでに血ィ取っちゃいます」
トガはそういい、大きめのナイフで私の足を切り付けた。
痛みで嗚咽が漏れ、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべる。
血を取られては行けないと分かっているのに、何もできない。
彼女は狂気的な笑みを浮かべ、血を容器に入れた。
次に腕、その次に顔と、傷口は増えていく。
しかし決して重症と言えない浅い傷をつける彼女は、
紛れもなく痛覚の激しいところをピンポイントで狙っていった。
最後だと言いたげな彼女が、私の肩にナイフを突き刺そうとしたとき、
もう半分以上切られている髪の毛が、暴風で揺れる。
見えたのは、優しい笑顔。
「私が来た！！！！」
嗚呼、やっと待ち望んだ“ヒーロー”が、やってきたのか。
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作者名：花氷 ベタ | 作成日時：2022年10月1日 18時
