形だけでも［完結］ (ページ12)

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夏の終わりページ12

このお祭りは花火も打ち上げるらしい。

私たちはこの前の砂浜で見ることにした。
小さなベンチがあったからそこに2人で並んで座る。

色とりどりの花火を見て、時々先生の横顔を盗み見た。

『綺麗』

花火もだけど、先生の横顔が。

松村｢花火とか久しぶりに来たわ～人混み疲れるね｣

なんておじさんみたいなことを言う先生が愛おしくて、後に戻れない気がした。

でも私は密かに決めていたことがあるから。

これで終わりにするから…

そう思って、花火を見ながら先生の手を強く握った。

先生は不思議そうな顔でこちらを見つめた。

松村｢どうしたの｣

『なんでもないよ』

私たちは、花火終了の放送を聞きながらキスをした。

＿＿

帰りの車の中、私はあの話をすることを決めた。
決意してたことがあるから…

『先生、』

松村｢なに？｣

『先生の奥さんってどんな人？』

…それはこの夏で先生離れをすること。

松村｢…｣

___ 先生彼女いないの？

___ ″彼女は″いないよ

『先生、″彼女は″いないんだよね？』

___ ねぇせんせ？

___ なーに

___ 吉田先生とも、するの？

___ は？

___ 他の女の人とも、″そういう関係″あったり…

___ お前だけだよ何言ってんの

『″そういう関係″は、私だけ…？』

先生の家に看病しに行った時にも感じた違和感。

具合が悪いはずなのに
綺麗に片付けられた部屋は不自然で、

そんなに料理もしない癖に
キッチンには妙に生活感があって、

香水なんて付けないのに
部屋には女物の香水の香りがして…。

帰り際にこっそり靴箱を覗いたら見つけた女物の靴。
何足もあった。

そしてひまわり畑に行った帰り、先生のポケットの中で震えるスマホは、きっと奥さんからの着信を知らせていた。

自分が嫌になった。
こんなことに気づいてしまうなんて。

吉田先生に言われた通り、調子に乗ってたのかもしれない。自惚れていたのかもしれない。

松村｢ごめん｣

『先生は悪くないよ。私のためにしてくれてたことだもんね…。でももう迷惑かけないから』

家に着くまでこれ以上は話さなかった。

夏が、終わったんだ。