新しい生活 ページ4
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それからというもの、俺は家に帰るまでの足取りが軽くなった。取り憑かれていたように嫌いだった夕焼けの中を、前より少しだけ楽に歩けた気がした。
＿＿＿Aが待っている。
それだけが俺を支える軸となっていた。
「ただいま、A」
「にゃっ、にゃ！」
「ふはっ、今日はいつにも増して甘えん坊だな」
玄関を開けると、いつもAが出迎えてくれる。その姿をあいつに重ねてしまうことも多々あるが、それ悟ったかのように甘えてきてくれるのだ。
Aを抱き上げてそのままリビングへ向かう。手を洗ったり着替えたりするのを分かっているらしく、自分から大人しくソファへ向かってくれる。本当に人間みたいに。
「いいぞ」
膝をポンポンと叩けばすぐにこっちに走ってきて座る。"ここ好きだよな"って顎の下を触れば、気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らした。
「･･･なぁ、A」
「今度、友達連れてきても、いいか？」
心配してくれるあいつらを自ら避けてきた。
考えたくなくて、現実を見たくなくて、ずっと会わないままでいたのだ。
･･･緑谷。
お前はなんて言うんだろうな。
きっと自分のことじゃないのにぼろぼろ泣きながら話を聞いてくれるんだろう。
ごめんな、お前にも辛いことがあるだろうに。俺は自分のことばかりだ。
この半年間、抜け殻のように過ごしてきた。
見るもの全てが色を失くし音さえも遠ざけ、誰の手も取ることはなくなった。
だって、そうしちまえば、認めたことになるから。あの日を認めないといけなくなるから。
「･･････Aは今の俺を見たら、拳骨くらしにくんだろうな」
"なにしてんの"って拳骨くらしてきて、頑張れって笑顔で言ってくれるAが脳裏に浮かんだ。
_____ほら、まだこんなにも鮮明に思い出せるんだ。
「･･･どうすればいいんだろうな」
「･･･にゃあ」
「お前が、あいつだったらいいのに」
Aの顔をむにーと伸ばせば、小さな手で俺の手をぺしぺし叩いて抵抗してきた。
ピンク色の肉球を触るのは最近のブームなのだが、ずっと触るとAは嫌がり始める。
明らかに嫌そうな雰囲気にまた笑ってしまうのだ。
「･･･おまえは、俺の隣にいてくれよ？」
猫に言葉なんて分かるはずないのに
消え入りそうな声で
Aを抱きしめた夜だった.
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莉緒(プロフ) - ボロボロ泣きながら読みました…！切なくて綺麗な世界観でとても引き込まれました。ありがとうございました！ (2月6日 15時) (
レス) @page31 id: ff1884054a (このIDを非表示/違反報告)
Ray.(プロフ) - 雨色の水滴さん» コメントありがとうございます！アカウント変更で通知が来ず返信が遅れてすみません…！ そう言っていただける作品作ることができてよかったです。本当にありがとうございました！ (2021年8月4日 16時) (レス) id: 6a8a3c2907 (このIDを非表示/違反報告)
雨色の水滴 - 涙がボロボロ溢れてきます!!素敵な作品をありがとうございます!! (2021年6月19日 9時) (レス) id: 5a0f0dfb22 (このIDを非表示/違反報告)
Ray.(プロフ) - みーさん» コメントありがとうございます！！そのお言葉で、作って良かったなと思えます(泣) ご愛読いただけて本当に感謝です！ありがとうございました！ (2020年8月3日 6時) (レス) id: a96d419ae2 (このIDを非表示/違反報告)
みー - とても感動しまし!! 何回読んでも涙が止まりません。 この物語は私にとってとても大切な物語ですありがとうございまし!!! (2020年8月3日 4時) (レス) id: 308ccef0fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Ray. x他1人 | 作成日時：2020年3月30日 18時
