褪せない今日より見えない明日で【高尾和成】2

Good Old Days 047 ページ13

　あんなに初々しくかった、私がタオルを渡しただけで耳を赤く染めていた純情な1年達は、入部から1ヶ月経った今、練習についていけず脱落する者も出てきた。


　マネージャーには、自分よりも学年が下の部員が退部届を出したときにいちいち引き留めるというという仕事がある。


　なんとか退部をやめるよう説得すると応じてくれる子もいることにはいるけど、それはごく少数。


　本人が覚悟を決めて退部届出してんだからいちいち引き留めることをマネージャーの義務にしないで欲しい。


　私は、義務としてではなく善意で引き留めてあげたい。そこまで効率化する必要はないように思えた。


　まあそんなこと、どうだっていいんだけど。


　今私が向き合うべきなのは、この洗濯済みの山積みのタオルだ。


　一軍の2・3年全員分のタオルは、洗濯かごに入り切らず、少し溢れている。


　私は洗濯機の前で思案する。先に3年生の人数分だけ、運んで行こうか。


　でも、2回に分けて運ぶのって面倒くさい。ここから体育館までの距離はとても遠いという程でもないが、タオルを沢山持っていくとなると、大変だ。


「……結局、悩んでる時間が1番無駄なんだよね。別で運ばなくてもいっか」


　そう呟いて、私は洗濯機からタオルを全て出して洗濯かごに移す。


　かごを持ち上げるときに自然とよっこらしょ、という声が口から漏れた。


　トシだなあ、まだピッチピチの高校2年生ですけどもね。


　えっちらおっちらと頑張って体育館まで向かっていく。


「あ、A。おせーから迎えに来たんだけど、何でそんな山積みのタオル1人で運んでんだよ」




　

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