あの頃はそれがこの世界の全てで【高尾和成】

Youth 008 ページ9

　シャワーを浴びて、服を装着した私達。


　モチのロンだが、2人一緒には入っていない。別々に入るに決まってるでしょ。だって付き合ってるわけでもないんだから。


　私が正論をぶちかましたら、和成はなんとも言えない顔をしていた。どんな妄想してたの、って問いただしたくなった。


「とっ、とりあえず私、帰るから」


　それから田中君シメるから、とは言わないでおいた。いつだっておしとやかな私でいたい(もう手遅れだけど)。


「お〜。じゃな。 あ、家ついたらメールくれよ？ もー何年もやり取りしてないから、和成寂しいっ！」


「ああ、うん、気が向いたらね。」


　敢えて和成のちょ待てよ発言について小一時間からかおうとしていたことを言わないでおくあたり処世術わきまえてるでしょ―――何処がなのだよと、脳内の真太郎が小○Dボイスで再生された気がした――。


「気が向いたらってナニ？！」


　和成はケラケラと笑った。


　……あ、なんか今の笑い方知ってる。


　色気も出て真太郎じゃない人と楽しくバスケなんかやってるくせに、その笑い方(と、私の幼児体形)だけはいつまでも変わらないんだな。


　やっぱり田中君は半殺しで許してやってもいいかな、なんて考え直した土曜日の午前9時。


　代わりに、自分が連絡寄越さなかったくせに「寂しい」と宣う和成には膝カックンをお見舞いして帰った。


　

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