あの頃はそれがこの世界の全てで【高尾和成】

Good Old Days 007 ページ20

「ていうかさ、A」


　チーズバーガーが次々に吸い込まれていく火神君の口(ブラックホール)から私の名が出た。


　チーズバーガー山の中から1つばかり拝借しようとしていた私は驚いて、彼のトレーへと伸びていた手をビクッと引っ込めた。


「てめ、今オレのバーガー盗ろうとしてただろ！」


「ヘヘ〜。バレちゃったかぁ」


　取り敢えず、愛嬌で誤魔化せるかな、と思って顔にキュートなスマイル(笑)を浮かべてみるも、悪足掻きに終わる。バレちゃったかぁじゃねーよ今更カワイコぶんな、だって。


　私と火神君のやり取りに爆笑してコーラ吹き出してる高尾君を、私は見たぞ。


「……まぁ良いや。話戻すぞ。ちょっと聞きたいんだが」


　ングング、と口に入ったチーズバーガーを一生懸命に飲み込む火神君。


　ゴクッと喉を鳴らしてから、火神君は言った。


「何で高尾とAいんのに緑間いねーの？ ハブ？」


　ブフォっと、またまた高尾君がコーラを吹き出す。正面にいる私にコーラがかからないようにという配慮は見て取れたが、結局は彼の隣に座っていた黒子君が被害とコーラをかぶることになった。


　火神君も怯えるほどの黒子君のキレ顔。大笑いしていた高尾君の顔がさっと青ざめるほどの黒子君のキレ顔。まぁ厚いオブラートに包んでそっとしておいてあげよう。


　というか高尾君、さっきから全然コーラ飲めてない。口に含んだコーラは半分以上吹いてしまったのではないだろうか。


　優しい私はそんな心配をしながら、そういえばさっきから話が進んでないな、と思い返す。話が進むスピードとカタツムリの全力疾走を比べても、カタツムリの方が速いレベル。会話のキャッチボールならぬ、会話のゲートボール。


　カタツムリ界のキャッチボールプレイヤーでもゲートボール亀界代表でもなくバスケ選手でしょ、貴方達。


　(さっきまで忘れていたくせに)高尾君が出したクイズの答を知りたくなった私は加速するパス(イグナイトパス)を高尾君へ撃った。


「高尾君、結局、話したいことって何なの？」


　机に突っ伏していた高尾君は、ガバっと顔を上げて、やっと本題に入れた、といった感じで話した。


「7月7日は、緑間の誕生日なんだよ。だから、日田ちゃん含めたバスケ部で、なんかお祝いでもしようと思って……今日アイツ居ないのも、サプライズで企画してるからで」


　

Good Old Days 008→←Good Old Days 006

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す