27話 彼は短刀です ページ29
『...ってなことがあったんスよ』
「ふぅん...だから大将、あんな挙動不審だったんだな」
『もう忘れて』
仁王立ちした薬研に詰め寄られ、一時は逸らそうとしていた話題を半ば無理やり引っ張り出されたAは、事のあらましを短縮して伝える。
それを黙って聞いていた薬研は先程の主の様子を思い返し、納得したように頷いた。
自身の失態を振り返されたAは、羞恥のあまり両手で顔を覆ってしまう。
「...で？
なんで大将が、そんな思い悩む必要があるんだ？」
救急箱をその手に持ったまま、思考を凝らすように自身の顎に手を宛がう薬研。
その疑問に答えるようにと、今の今まで顔を覆っていた青年は少しだけ面を上げる。
『...恨みを祓うどころか、その対象の神様にご無体を働いてるんスよ？
本霊還し失格ッス』
まるで道端に捨てられた子犬のように、弱々しい声音で呟いたA。
そんな主の様子に、初鍛刀の彼はしょうがないと言わんばかりに小さな溜め息を吐く。
「大将にも非がある...が、どうだかな。
俺にはよく分からん」
『え？』
きょとんと目を丸くさせているAを見やりながら、薬研はすぐ側に立っている柱に凭れて身体を預ける。
一度瞳を閉じ、そしてまた開けた。
「全部が全部、大将の言う“ご無体事”にしちまったら、あんたは何も出来なくなる」
それに、と。
自身の主である男と視線を合わせ、ニヤリと微笑みを浮かべて先を続けた。
「それがご無体だってんなら...これまでの生活で大将が俺たちにやって来たことも全部、ご無体になっちまうぜ？」
『...っ！』
彼は本当に短刀なのだろうか。
否、短刀である。
先程背中を預けたばかりの柱から離れ、まっすぐにAを見据える彼は、とても頼もしい笑みを浮かべていた。
「まぁ、あんまし気負うなっつーこった」
更にはつま先立ちをして、自身より背の高いAの頭をよしよしと撫で付ける。
『...子ども扱い、止めて欲しいんスけど』
「俺っちにとっちゃあ、あんたは十分子ども...いや、赤ん坊だな」
『誰が...！』
「そういうところだっつーの。
何時ものあんたも好ましいが...今の素のあんたも俺っち、良いと思うぜ？」
何時もは辛辣な彼からの、突然の告白である。
Aは何か言い返そうと口を開くも、何も出ては来なかった。
「へいへい...ほら、機嫌が直ったならとっとと仲直りして来い」
『...了解ッス』
続く (更新停止中)
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あ - 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (
レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです！続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でｯ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします！続き楽しみにしてます！ (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)
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