10話 騒がしい仕事場 ページ12
障子越しに射し込む太陽の光は、幾らか緩和されていて。
朝食を終えたAは、その温かさに一つ大きな欠伸を漏らした。
広間から重たい足を運ぶのは、彼の仕事場である鍛刀部屋だ。
此処の本丸は外界とは違い、少しだけ早く時を進めてある...とは言うものの、本霊還しを待つ刀剣は日に日に増えていく。
普通に一日を過ごしているだけでは、とてもではないが捌き切ることが出来ないのだ。
...それだけ、折られる刀剣たちが居るということなのである。
Aは鍛刀部屋の前で足を止め、その扉を勢いよく開け放った。
『さぁて、今日もがんば...』
「う、うぅ...ひっく...」
「い、いないいない〜ばぁ!
どうだ?驚いたか...って、待て待て泣くな!」
『...何やってるんスか?』
気合いを入れ、腕捲りをするAが足を踏み入れたそこは鍛刀部屋...で、合っていた筈だ。
普段なら誰も居ない筈のそこには、どうやら先客が居たようで。
Aはスッと目を細め、目の前で泣いている桃色頭の子どもをあやしている真っ白な彼に問い詰めた。
そこで漸くAの存在に気が付いたらしい。
子どもと目線を合わせる為にしゃがんでいた彼...鶴丸は、待ってましたとばかりに顔を上げた。
「ああ、やっと来たか!
君を驚かせようと鍛刀してみたが...逆に驚かされたぜ!!」
『うん、で?』
「頼む、助けてくれ」
「う...うぅ...」
未だに泣きじゃくる子どもに、鶴丸はお手上げと言ったように肩を竦めて助けを乞う。
弱々しい彼の様子にAは一つため息を吐き、了解ッスと頷いた。
がくりと肩を落としながら、鶴丸と同じようにしゃがみ込んで子どもの背中を擦る。
鶴丸はそそくさと部屋の隅へと避難した。
『一体、どうしたんスか?』
「う、うぅ...ひっく、ひっく...」
微笑み、優しい声音で問い掛けるA。
しかし、子どもはなかなか泣き止まないでいた。
あわあわと慌て始める鶴丸を他所に、Aは子どもの頭を撫で付けながら、スッと廊下の方を振り仰いだ。
『薬研た〜ん!!出番ッスよ〜!!』
大きく声を張り上げ、自身の初鍛刀の名を呼ぶ。
すると間もなくして、バタバタとした慌ただしい足音が鍛刀部屋に近付いてきた。
『もう大丈夫。
兄弟のことは、兄弟に任せるのが一番ッスからね』
今一度子どもの方に視線を向け、Aはふわりと微笑み掛けた。
『ね?
___秋田藤四郎?』
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あ - 更新待ってます (2017年11月29日 1時) (レス) id: e1ae95dbc2 (このIDを非表示/違反報告)
柚希 - 面白いです!続きが気になります。更新楽しみに待ってます(゜∇^d)!!(゜∇^d)!! (2017年4月30日 10時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
ぬっこりアロエ - 1でッ!!!!! (2017年3月21日 20時) (レス) id: 0d3966aac5 (このIDを非表示/違反報告)
トゥクルカ(プロフ) - 1でお願いします!続き楽しみにしてます! (2017年3月20日 11時) (レス) id: 77391b8609 (このIDを非表示/違反報告)
ヴェルさん(プロフ) - 2が良いです。鶴丸にはホワイト本丸の味を知ってほしいです…ブラックな家族が顕現したら耐えられないとも思いますし... (2017年3月20日 11時) (レス) id: 8a36f75a5a (このIDを非表示/違反報告)
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