真夏の白昼夢

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事前に知らせてないけど、
忘れ物とりに行くだけだし、いいかって。
軽い、気持ちで。


合鍵使ってドア開けて、
廉を呼ぼうとした時だった。




「カレン………っ」

「ああ…廉くん、もっと…」




女の甘い声。

廉の、荒ぶる声。




ありえないと思った。

こんなこと、ドラマや漫画の中でしか起こらない出来事だって。


え？って。
なにこれ…なんで…

最初理解できなくて、
呆然とそこに立ち尽くす。


これは、
この状態は、

浮気現場？



その声は、リビングから聞こえてくる。
……リビング？

私と、リビングでなんて、やったことない…
いつも、優しく寝室まで連れてってくれるから。
そんなリビングで、なんて。

こんな廉の荒ぶる声だって、聞いたことない。
いつだって落ち着いてて、
柔らかく微笑みながら抱きしめてくれる。




あのリビングにいるのは、
……ほんとに、廉、なの？





怖くて、悔しくて、悲しくて、ムカついて、

がくがくと脚が震える。
目眩が。
吐き気さえした。


やだ……
もう、こんな声聞きたくない。
こんな所いたくない。

そう思うのに、
体は固まったみたいに動かない。




「………んん…はあ、廉くん、」

「まだ、…やろ？」




嫌でも聞こえてくる声。

いろんな、おと。

耳を塞ぎたくなる。
でも、体は動かない。
ああ…地獄だ。ここは地獄。



涙がじわりと出てくる。

泣きたくない。
なのに、涙が。



「うう……、」




私の発した小さな泣き声は、

2人の大きな声によってかき消された。









どうして……？



ぺたん、と力が抜ける。

あっ！と思ったときには既に遅く。

玄関先に倒れ込む。
持ってたバックが落ちて、中身がガシャーンとか派手な音を立てて出た。

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