コケるつもりはなかったが…… ページ34
side Kento
ベルが甚爾さんに付いたのは予想外だった。
いつだってAの怪我に過剰に反応していたのに。
帰りたいと言っていたからとはいえ
気絶させてまで帰宅させようとした甚爾さんが解らない。
基本いつも無気力で、何もしたがらないのに
今だってわざわざAを迎えに来た。
一体何を考えているんだ。
Aの顔を見ながら考えていれば
段々と表情が険しくなってきた。
「A？どうしました？」
私の声でベルが反応し、こちらへ飛んで来た。
ﾍﾞ＜主っ、どうなさったのですか！？＞
魘されているのだろうか。
それとも、やはり輸血による拒絶反応なのか。
砂山さんが直ぐに家入さんを呼んで来た。
診てもらうと特に問題はなく
拒絶反応ではないらしいが...
表情は変わらず険しい。
徐々に冷汗も出て来た。
紗「Aっ、大丈夫っ！？」
砂山さんが手を握り声を掛けるも起きる気配はない。
騒がしくなった事で五条さんと夏油さんも何事かと
こちらへ近寄ってくる。
『……ごめ、ん。』
何に対して、誰に対しての謝罪なのだろう。
この言葉を聞いてしまうと険しい表情の理由は
[苦しさ]ではなく[悲しみ]から来るものではないかと
考えてしまう。
「A、何に謝っているんです？」
ここまで周りが騒がしいのにまた起きない。
興味の無さそうだった五条さんですら心配した様子だ。
『…………わす、れ』
忘れ…？その言葉続きは何だ。
何を言いたいんだ。気持ちが焦る。
『……た。ご、めん。』
[忘れた。ごめん。]
何を忘れた？
そこまで悲しい表情で謝る程のことをしたのか
『……セー、ブ……し、忘れた』
誰もがガクっとズッコケた。
私ですらズッコケた。
コントじゃあるまいし。
錦「心配させんな、このバカ」
「全くですよ」
Aらしいといえば、Aらしいのだけど。
心配したのがバカらしく思えた。
安心したのか砂山さんはクスクスと笑いながら
Aの頭を撫でている。
目が覚めるまでまだ掛かるだろうか、と
腕時計を見ていたら
『ーーーーー』
またAが言葉を発した。
と、同時に
「えっ」と驚いた砂山さんの顔が強ばった。
西尾さんの表情も少し硬い。
聞き間違えだろうか
いや、私もこの耳でしっかりと聞いた。
[フェイタン]
かつてAが愛した男の名であり
一族を皆殺しにした集団の1人。
つまりAはこう言ったのか。
[セーブし忘れた。ごめん、フェイタン]
2度転生してもAは囚われているのか
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作者名：ガヤ。 | 作成日時：2024年7月11日 21時
