眠り姫

黄：お見舞い ページ15

＜中間side＞


お昼の生放送が終わり、Aの病室を訪れる。



あの日のライブから、元気なAに会えていない。



｢Aー？入るで？｣


A｢淳太？｣



よく通るあいつの声。

よかった、ちゃんと生きてた。




｢なんか久しぶりな気ぃすんな？体調どうなん？｣

A｢ほんと迷惑かけちゃってごめんね！めっちゃ元気！
もう一生分寝た気がする笑｣

｢それはよかった笑｣




眠っている間は飲食もままならないため、
点滴で栄養を補う。



いつも以上に明るく元気な様子だが、

青白い顔色や華奢な腕に残る点滴の痛々しい跡が
この数日を物語っていた。




｢別の仕事で来れんかったけど、照史も会いたがってたで｣

A｢ほんと？…ってことは今日木曜日？｣

｢うん。ラジオまで時間あったから寄ってみた｣

A｢そっか…忙しいのにごめんね。
、、今ファンの子達って病気のこと知ってるのかな？｣





Aの病気のことは公表していない。


アンコールに出られなかったあの日から
メディアにも出ていないため、
Aの心配をする声は大きい。




ファンのみんなを不安にさせないことは大事だ。





でも、俺らはAの気持ちを1番に考えたい。




｢Aはどうしたい？｣



A｢…私自身この病気のことをまだ理解できてないし、
どのくらいで復帰出来るかもわからない。

だからもう少し待ってほしい。

ちゃんと大丈夫な証拠を届けられるようになるまで。

今は、みんなに元気だよって伝えたい、かな。｣





申し訳なさそうに、でも真っ直ぐに話すA。



こんな状況でも崩れないAのプロ意識とプライドは

いつも俺に勇気を与えてくれる。





｢わかった。じゃあラジオでAのこと話してもええ？｣

A｢もちろん！元気やったよって言っといて〜｣




そこからはいつもの楽屋みたいにふたりで話した。



結局、しげのイタズラはAが気づく前に
看護師さんが消してしまったらしい。


刺激になってしまうため
スマホやテレビなどの情報を避けているらしく、

グループメールでのやり取りを見せると驚いていた。



大きな黒子を付けて寝ているAと、
嬉しそうに歯を見せてるしげ。


記憶にない写真に、あいつ絶対しばく！と笑うA。




よかったな、しげ。

ちゃんと笑ってくれたで。




ふたりで笑っていた次の瞬間、



Aは電池が切れたように動かなくなった。

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