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42 JH side ページ42

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夕方、冷たい風が街を吹き抜ける中、俺は特に目的もなく歩いていた。頭の中に浮かぶのは、Aの顔だけ。会いたくてたまらなかった。でも、歩き続けるうちに、ふと後ろから声がかかる。

「ジョンハンさん、どちらに向かわれているんですか?」

振り返ると、そこには例の婚約者、ユナが立っていた。微笑みながらこっちを見てるけど、そんなの気にも留めずに俺はまた歩き出した。

「こんなところでお会いできるなんて奇遇ですね。」

しかしこの女は、まるでそれが当然のように、俺のすぐ隣を並んでついてくる。

「ジョンハンさん、少しお話しませんか?婚約者としてお互いもっと知るべきだと思うんです。」

「……婚約者じゃねえし。」

無言のまま歩き続けたが、彼女は気にする様子もなく、次々と話しかけてくる。ついに耐えきれなくなり、ポケットからスマホを取り出した。

Aの名前をタップし、耳元に電話を当てる。

『もしもし?』

「今どこ?」

『仕事中だけど…あと15分くらいで終わるよ。どうしたの?』

「迎えに行くから、外で待ってて。」

短く言い切り、電話を切る。ユナが話し続ける声を完全に無視して、Aの職場へ向かった。


Aが外で待ってるのが見えると、自然と足が速くなる。駆け寄って手を取り、笑顔で言った。

「ごめん。帰ろっか。」

Aが少し驚いた顔をしたけど、俺はその手を離さずに歩き出す。Aが視線を少し外に向けるのを感じた。顔を少しそちらに向けると、あの女が遠くに立ってるのが見えた。

『あれ?ユナさん?こんばんは。』

Aが声をかけたけど、俺は一切振り返らず、そのままAの顔を見つめて、何事もなかったかのように口を開いた。

「今日の晩ご飯、何にする?」

『えっ…いや、まだ決めてないけど。』

「じゃあ鍋とかどう?Aの作るやつうまいから。」

Aがちょっと恥ずかしそうに肩を押し返してきたけど、そんなの気にするわけない。俺は軽くAのほっぺにキスをした。

『ちょっと!何してんの!』

Aが赤くなって声を絞り出しても、俺は気にせず、あの女にわざと見せつけるようにAに構う。

「じゃ、行こ。」

Aの手を軽く引っ張りながら言う。Aは少し戸惑ってるけど、ユナに向き直って、軽くお辞儀をしていた。

『それじゃ、失礼しますね。』

ユナの方は引きつった笑顔で頷くだけ。俺は一切無視してそのまま歩き続ける。Aの手を握りしめながら、夜の街を後にした。

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作者名:黒猫アイランド | 作成日時:2025年1月15日 12時

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