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なんてことない日常が戻りつつある今日。それなりに充実していたけれど、少しだけ変わったことがあった。
それは、ホン・ジスさんとよく話すようになったこと。
「お昼、一緒にどうですか?」
「近くに新しくオープンしたお店、気になりません?」
そんなふうに声をかけられることが増え、LINEの通知も頻繁になった。
仕事の話だけじゃなく、何気ない雑談までしてくるジスさんを、私はなんとなく適当にあしらっていた。
正直、彼の気持ちにはうすうす気づいている。でも、私の気持ちはまだ曖昧なままで
私はどう答えればいいのかが分からなかった。
そのまま流れに任せて過ごす日々が続いていき、気持ちが整理できないまま、時間だけが淡々と過ぎていった。
...
仕事も繁忙期に突入し、業務を終えた頃には、すでに時計の針は終電ギリギリを示していた。
焦る気持ちを抑えながら、私はいつもなら避ける繁華街の道を急いで歩く。人通りは少なく、妙な胸騒ぎがする。
それでも間に合わないという焦りが、いつもの慎重さを鈍らせていた。
不意に、路地の向こうから数人の男たちの声が聞こえた。
嫌な予感がして、私は足を速める。
サッと通り過ぎようとした瞬間__
「ねぇねぇ、おねーさん、ひとり?」
横から不意に声をかけられ、隣に男が並んできた。
お酒の匂いが鼻をつき、酔っ払っている様子が一目で分かる。
その軽薄な笑い声に、背中を冷たい汗が伝った。
さらに前方には別の男たちが道をふさぐように現れた。あっという間に囲まれた私は、一歩も動けなくなってしまう。
目つきが悪くニヤニヤ笑う彼らの中に、一際見覚えのある顔があった。
「ん?もしかして…Aじゃね?え〜なんでこんなとこいんの〜?」
その男が私に気づき、ニヤッと笑った瞬間、心臓が嫌な音を立てた。
目が合った途端、全身に嫌な寒気が走る。——彼は私の元カレだった。
私を弄び、心を踏みにじった張本人。
『やめて、触らないで!』
思わず叫んだけれど、私の腕を掴む力は強く、振りほどこうとしてもびくともしない。
「いいじゃんいいじゃん。ちょっとしゃべろーよ?」
下品な笑い声とともに、私の腕をさらに引っ張る男たち。足元がふらつき、路地裏へと引きずられていく。
どうしよう——誰か助けて。
必死に叫ぶけれど、声は虚しく暗い夜に吸い込まれていく。
目をぎゅっとつぶりかけたその時__
「彼女から手を離してください。」
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作者名:黒猫アイランド | 作成日時:2025年1月11日 19時