プロポーズから始まる恋 (ページ11)

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桜吹雪が舞う並木道。

その日、僕は人生で初めて＿＿。

よく通る何気ない道、ふと目に入った後ろ姿に、思わず足を止めた。

風に舞う花びらの中、彼女が振り返る。
その瞬間、心臓が大きく跳ねた。

「あ」

声が漏れる。

心の中で何かが、強く、確かに、動き出す。

気がついた時には、

「結婚してください！」

という言葉が、口から飛び出していた。

どうにかして彼女をつなぎとめたい一心で、

いつもなら冷静な判断ができる自分が、目の前の彼女のことしか考えられなくなっていた。

彼女が去った後も、その場に立ち尽くしたまま。

首から下がったIDカードのロゴが、目に焼き付いていた。

なんだろう。この胸のざわめきは、
こんな感情は初めてだった。

それからというもの、彼女に会える場所を探す日々。

IDカードから会社は分かった。タイミングも良いし、ここに転職することを決めた。

でも、そうだな。最初はもう少し運命的な再会に見せたい。

「行きつけの店とか、ないかな...」

確かな根拠もないまま、ただその願いだけを胸に。

まずは職場から1番近いこのカフェ。もしあるとすればここの可能性が高いだろう。

ビンゴ、神様は僕に味方しているのか

そこで彼女の姿を見つけ、心臓が大きく跳ねた。

数日見張れば、彼女は12時45分頃、だいたいこの時間にカフェに立ち寄ることがわかった。

次の日、少し早めに列に並ぶ。

彼女が近づいてくるのを見計らって
ゆっくりと振り返る＿＿

自然なように、偶然を装って話しかけたつもり。でも彼女は冷たい。

ああどうしよう。距離の詰め方が、分からない。

これまで仕事一筋で過ごしてきて、自分から人と関係を築こうとしてこなかったのが仇となったのか。

よく女性から声をかけられることはあっても、自分から誰かを追いかけるのは初めて。

彼女は一向に振り向いてくれない。

自分のやり方が間違っているのだろうか...。

もっと彼女のことを知りたい。
もっと近くで、彼女の笑顔が見たい、ただそれだけなのに。