【松岡凛】部長の妹がこんなに美人なわけがないPart3【Free!】

48 ES編　Side宗介 ページ48

.

　その悩みは、やっぱりマンガの主人公が抱えるそれだった。
『だったら公務員にでも転向すりゃいいじゃねえか』なんて言えば、返ってきた返事は『ありえない』だ。
　凛の夢は昔からデカ過ぎる。
　でもそれを実現する為の努力を惜しまないからこそ、俺も追い求めたし、思い描いた。

「アイツがそうやって言ったら、お前なんて返すんだよ」
「……どんな言葉を返せるだろうな。でもきっと、いや、間違いなく俺はAと――」

　最後の一言は、聞いてるこっちがつらい声だった。
　もう今日のところはこの辺でお終いにしておこう。俺が凛のメンタル崩してどうする。
――とは思うけど。

「ラブコメの主人公とヒロインって、結局なんだかんだブチかましても、くっつくんだよなあ」
「あ？」
「心配してる暇があったらテスト勉強しとけ、っつー話だ。上位から順位落とせねぇんだろ、特待生さんよお」
「…………この部屋にも電子ピアノ、ありゃいいのにな。設備的な意味で音楽だけが気がかりだ」

『あったら楽だけど邪魔だろ』と言えば、『だよな』と返される。
　そんな話をしながら凛が机に向かって開いたのは、ノートじゃなくてスクラップブック。
　ベッドからおりて後ろからそれを覗き込む。
　犬だの猫だのウサギだの、花もあるな。様々なふせんには必ず女の字で一言書かれていた。

「……そこまでキッチリ整頓してるお前もお前だが、アイツもよくそんな枚数、メッセージ被り無しで書けるな」
「見んなよ」
「いや見るだろこれは。なに、わざわざ書いてもらってんの？」

　先日、凛が絶対食わないスイーツが印字されたレシートを部屋で拾った理由を知るまで、あと数秒。

---

この小説の続きへ→←47 ES編　Side宗介

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す