十六話 ページ19
保健室へ早歩きで向かう。
途中他の運動部とすれ違ったり、吹奏楽部の奏でる音色が響いていたが、俯いてただひたすら泣くのを堪えている私は、そんなことを気にしていられなかった。
そして誰かと肩がぶつかる。
「あっごめんなさ…A!?」
聞き慣れた可愛らしい声が耳に届く。
「莉…子…?」
「大丈夫!?なんかあったの!?アイツになんかされた!?」
莉子に肩を揺さぶられ、心配一色の顔で私を見つめる顔が目の前にある。
また涙が溢れてしまいそうになって、つい反射的に
「なんでもないからっ!!!お節介なんだよ!!!!」
と叫んでしまった。
我に返り目を見開いて顔を上げると、莉子が頭を鈍器で殴られたような顔をしていた。
「あ、あ、あぁぁ…」
「…あ……ごめん、…お節介だったね。今までも…ホント、ごめん」
「あ、ちが、あ…」
声が出ない。
言いたい。言いたい。
ただ一言、「ごめん。」と。
でもその一言が出ない。
「……そういう文句はさ…早く言ってよね」
莉子は泣きそうになりながら笑顔を貼り付けて言った。
その悲しすぎる笑顔に耐えられなかった。
「莉子っ!!!」
走り去っていってく莉子の背中に叫んだ。
もう…なんなの…声、出んの今かよ…
莉子の目から溢れているであろう何かが、日の光を浴びて煌めいていた。
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もちサブ - お願いだ…夢主ちゃんをしあわせにしてくれえええええ)))))) (2022年5月17日 22時) (レス) @page35 id: 56e816f997 (このIDを非表示/違反報告)
三月 - わ〜!!面白かったです! (2022年5月17日 17時) (レス) @page35 id: 2f9ff98037 (このIDを非表示/違反報告)
613honoko(プロフ) - コメントしようか迷ったのですが…なんというか、不自然な終わり方でしたね。急に薄っぺらくなったような、人間らしい奥行きが無くなったような…他の小説は誰が言うでもなく自分が納得できるまで書いてみては? (2022年4月1日 14時) (レス) id: e49b0d2946 (このIDを非表示/違反報告)
作者 - 613honokoさん» コメントありがとうございます!やっぱり悪女側も内面を知ると好きになったりしますよね〜!更新頑張ります! (2022年3月26日 11時) (レス) id: 0c5a82d5af (このIDを非表示/違反報告)
613honoko(プロフ) - 寺春好きだわ、頭いい。幸福を掴むのは相応の孤独と地獄を見てきたものって相場は決まってんのさ、ハハハ。続き楽しみにしてます (2022年3月24日 18時) (レス) id: e49b0d2946 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レタス様 | 作成日時:2022年1月29日 9時