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「Aさんはね、昔色々あったみたいよ、いざこざ」

「それは、どういう、?」

「学年のボス的な人と大喧嘩?したんだってさ。僕も詳しいことはよくわかんないんだけど、
 それで中2くらいからあんまり学校に来てなかったらしい」


問ちゃんは何でも情報屋だな、ほんと。
俺は、彼女の瞳の影の理由が分かった気がした。


「ちょっと言ちゃんに似てるよね、Aさん笑」


でも、Aさんそういうタイプに見えないんだけど。好きな子フィルターってやつ?
きっと何か理由があったんだろうな、いつかその話、聞いてみたいな。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


1時間目の美術を終えて、1人で足早に教室に戻り、窓際のせきに向かっていたときだった。

俺は、息を飲んだ。
そこには、数ヶ月ぶりに見るAさんの姿があった。

心臓の鼓動は収まることを知らないようだったが、俺は真っ先に口を開いていた。


「おはよ、Aさん」

俺は敢えて「久しぶり」「来れたんだ」という言葉を使わなかった。俺が一番嫌いな言葉だったから。


『おはよ、言くん』

変わらない笑顔に俺は安心した。


それからというもの、Aさんはまた少しずつ学校に来るようになった。
色々あってLINEも交換できて、Aさんが学校に来ない日もLINEで会話をした。
こんな日々がずっと続いて欲しいと思った。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

『え、言くんも有吉○ミ好きなの!?笑』

「うん、ヒロミさんのリフォームのやつめっちゃ好きなんだよね」

『意外だな〜私大食いの企画好き』

「そっちのほうが意外なんだけど笑」



2月のある日の出来事だった。
俺たちはすっかり打ち解けて、テレビやゲームなど、くだらない話で盛り上がっていた。




3時間目の体育の前、体育館へ向かう外通路、

何かが倒れるような音と、物がバラバラと落ちる音が聞こえた。


俺の体は、無意識にそっちへ走り出していた。
頭の片隅では気づいていたんだと思う。彼女の顔色が日に日に悪くなって、隈が濃くなっていることに、
でも触れられ無かった。触れちゃいけない様な気がした。



それからのことはあまり覚えてない。幸い近くに保健室があったので、彼女を抱えて保健室へ走った。
養護教諭のおばちゃん先生にお礼を言われ、俺は渋々保健室を出た。本当はずっと傍にいたかったけど。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名:翠依 | 作成日時:2025年1月8日 23時

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