【gn×夢主】この世界に君がいるから ※苗字設定推奨 ページ1
※高校生、夢主と言ちゃんは同クラ設定です
Side gn
(今日、来てるかな…)
心のどこかで諦めつつも、いつものようにそわそわしながら教室に入る。
(…来てない、よね)
密かに探してはみたが、やはり彼女の姿は無かった。
Aさん。
俺はこの人に恋をしている、のだと思う。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「ねえ言ちゃん、Aさんのこと好きでしょ?」
俺には双子の兄がいる。彼は人気者で、いつも4、5人には囲まれている。
彼とはもちろん仲は良い、けど踏み込んだ恋愛の話はしない。
しかし彼には全て見透かされていたようだ。
「なんで分かるの、問ちゃん、、、」
「だって顔に書いてあるみたいなもんだからな、お前笑」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
鮮明に覚えている、それはある日の化学の授業のことだった。
『ルーズリーフ、貸すよ、、?』
消え入るような、透き通ったような声だった。
俺はその日、ルーズリーフを忘れてしまった。いつも熱心に板書はとってるほうなのに。
仕方なく、こそこそと大きめの付箋や教科書の僅かな隙間にメモをとっていたが、隣の席のAさんにはバレていたようだった。
「いただいて、よろしいでしょうか…」
俺もびっくりするほど弱々しく、辿々しい声が出た。
人と、ましてや女子となんて話さない俺だから、普通に緊張していたのもあると思う。
が、俺はそれ以上に、Aさんの瞳に夢中になっていた。
『はい、足りなくなったら言ってね、いっぱい持ってるし』
Aさんは、俺の辿々しい敬語の可笑しさに少し笑いながら、10枚くらいのルーズリーフを差し出してくれた。
少し多いくらいなのに、足りなかったら言ってね、なんて言葉を添えてくれるAさんの優しさを俺はずっと噛み締めていたいと思った。
「ありがと、助かった! 明日返すね」
俺が精一杯の笑顔でそう応えると、彼女は優しい微笑みを返してくれた。
Aさんは透き通っていて、どこか寂しげな、影のあるような目をしていた。
いつからだろうか、彼女が学校に来なくなってしまったのは、
あれ以来、俺たちは少しずつ話すようになった。
Aさんにも殆ど友達は居なかったから、お互い似た立場で話しやすかった。
それに、Aさんの瞳の影は、どこか俺にも重なるところがあるような気がした。

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作者名:翠依 | 作成日時:2025年1月8日 23時