epi.6 再び ページ7
Your side
あれから1ヶ月。
私がお手伝いをした記事は無事にリリースされ、なかなか好評だったようだ。
また、記事内での私の活躍(?)は一部の読者の間で話題になったようで、ひっそりとやっていたTwitterやインスタのフォロワーも少し増えた。
QuizKnockファンの行動力には少し感心した。
そんなある日。
門下の会の帰り道に急に先輩に呼び止められ、奢るから!とカフェに連れて行かれたかと思ったら、
「助けてAちゃん!」
『え、ちょ、どうしたんですか、先輩。』
いきなり私に手を合わせて頭を下げた先輩に、思わずあたふたしてしまう。
「いや、あのね?どうやらQuizKnockの記事で東大生が藝大入試に挑戦するみたいな事をやるらしくて、それで楽典やりたいから教えて欲しいって福良さんから頼まれて。」
『ほお。』
「でも私ってさ?楽典そんなに得意じゃないでしょ?っていうかAちゃんめちゃくちゃ楽典得意でしょ?!」
楽典というのは、音楽の中でもその理論を問う分野だ。
音楽を志す人間はどの楽器をやっていても避けては通れない道であり、得意不得意がはっきり分かれる分野でもある。
感覚的には算数や数学、あるいは謎解きやパズルにも近く、それに加えていくらか知識が必要、といったようなものだ。
確かに、私は楽典が得意だ。
得意というか、面倒な問題に引っかかったりケアレスミスをしないと言うだけなのだが、楽典で点を落とす時は大抵そういうことなので、それが無いということは得意と言っても良いだろう。
「それに、この件に関しては実際に動画に出てるようなメンバーと直接会うことになるから、その辺の友達には頼めなくてさ。Aちゃんなら知り合いが関わってるって言ってたから…」
そう言って少し眉を下げた先輩に、思わず同情してしまい、
『分かりました、やりましょう。』
と頷いてしまった。
「ほんとに?!うわぁ、よかったぁぁぁ!!私またあの黄色い本読み直すの嫌〜!とか思ってたの〜!!」
なんて言いながらニコニコでカフェオレを掻き回す先輩。
あれ、なんか私、うまいこと乗せられちゃった感じ?
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作者名:きゃる | 作成日時:2021年9月10日 10時