『follow my hand』Halloween ALL ページ34
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オレンジと黒と紫…そんな色に彩られた街と、どこかイベントへ向かうのだろうか、控えめなカチューシャやマント、完璧なコスプレをした仮装の人々をすり抜けてオフィスに向かう。
休日出勤、とまでは行かないのだけれど、どうしても今日中にチェックしておきたい資料があって、彩の無い部屋を抜け出してイベント感あふれる日も暮れた街に飛び出した。
こんな日に、共に過ごす彼氏もいなければ、イベントごとに繰り出すようなアクティブさも無い自分に若干の寂しさを感じてしまうのは、今日がハロウィン当日だからなのだろうか。
(こんなイベントごとが日曜日に被ることがそもそも…)
等と場違いで卑屈な八つ当たりをしながら、同じく日曜日なことでも、こちらは人が少ないだろうと思い込んでいたオフィスのドアを開けると…。
「えっ?Aちゃん?!」
突然、いかにもチープなパーティグッズとして有名な鼻眼鏡をかけたふくらさんに出くわして、一瞬頭がフリーズしてしまった。
『ふ、くら…さん?』
お互い時が止まったかのような数秒のあと、ふくらさんがその鼻眼鏡を外しながら、照れたように苦笑する。
「うわーこれはさすがに恥ずかしいなぁ。まさかAちゃんが来ると思わないもん。どしたのこんな時間に。忘れ物?」
『あ、いえ、ちょっと…どうしても見たい資料があって、気になったらいても立ってもいられなくなっちゃって…』
「そんなの明日で良いのに」
鼻眼鏡よりはレア度が低くなるかもしれないが、いつものメガネをかけていない貴重なふくらさんの優しい横顔を見ながら共に廊下を進む道すがら、口をついてその疑問がこぼれ出ててしまった。
『それで、その、それは…』
「え?あぁ、そうだね、コレ。そりゃ気になるよね。今日ちょっと大型案件の最終会議してたんだけど、それ終わりでみんなでちょっと飲もうかって話になって。でも今日ハロウィンでしょ?だからオフィスで飲むことにしたんだけど、そしたら山本とこうちゃんがせっかくだからって買い出しのついでに100均で買ってきたんだよ」
でもこれは無いよねぇと、手元の鼻眼鏡をいじり、もう一度掛け直してからまた私の顔を覗き込まれてしまって、ふくらさんには申し訳ないけれど、笑いが堪えられなくなってしまった。
そのまま中央の作業スペースに入ると、そこにはもう、始まりは今かと待ち構えている状態のパーティ会場、もとい飲み会会場がセッティングされていた。
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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時