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『す……えっ?!』


一瞬、何を言われたのか意味を捉えかねた。

そもそも、ふくらさんから聞こえたその言葉が信じられなくて、耳を疑うしかなかった。


(私が、ふくらさんを好きなことが、バレてて…?ふくらさんに…好き、って…言われた?…え?!)


何をどう言って良いものか、そもそも頭がパニックで何も考えられずただあたふたとしていると。


「だから、ね?」


私の手を包んでいたふくらさんの手がそっと離れたかと思えば、そのまま先程より強い力でエコバックを奪われてしまう。


『そ、れは…』


こんな状態でも、まだどこかで荷物を持たなければと思ってエコバックを追ってしまった自分自身も大概なのだけれど、それ以上のことが、また目の前で現実になる。


「せっかく必要十分条件の照明が出来たんだから、もう、こんな口実より、こうしたいんだけど?」


再び戻ってきたふくらさんの手の温もりは、先ほどよりも、より密着していて、絡んでいて。

それは所謂カップル繋ぎというもので…。


「この方がいいでしょ?」


相変わらずニコニコしながら顔を覗き込んでくれたふくらさんの顔が、少し、赤い、気がする。


「ずっと、こうしてみたかったんだよね。ふふ、Aちゃんの手、あったかいな」


心臓がどこにあるのかわからなくなるほど、全身で自分の鼓動を感じながら、それでも、全神経はふくらさんと繋がっているその手の中にある。

手のひらに感じるふくらさんの柔らかさを改めて認識すると、何故、どうして、という気持ちがあふれて、ジワリと目の前が滲んでしまった。


『ふく、ら、さん…ほんと、に…?』


冗談でも、こんなことをする人では無いことくらいわかってる。

けれど、気持ちがちゃんとした言葉にならないまま、口からこぼれるしかなくて。


「ん?あぁ、そうだね。ちゃんと、言わなきゃだよね」


絡んだ指と指にそっと力が加わって、お互いの体が向き合った。

穏やかで、大好きなその声が。

再び、私の名前を呼んでくれる。


「Aちゃん」


眼鏡の奥のその優しい瞳に私が写って。

頰を、一粒の涙が伝った。


「好きだよ」


幸せを、指先に絡ませて。


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作者名:SEN | 作成日時:2021年10月16日 0時

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