妖艶と蜻蛉ーizw ページ13
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童話のなかで悪役は、よく高笑いをする。
戦隊ものなんかでも、冒頭の悪役は笑っているのが定番である。
なんで笑っているのか、子供心に不思議だった。
今ならばその問いに答えが出せる。
「,,,ざわ、伊沢」
「あ、すみません須貝さん。どうしましたか」
「どーしたもこーしたもないでしょ!あんたあと30分で収録始まんじゃないの!?」
「え?うわっやべえ!」
時計の針は確かに予定時刻の30分前を示している。ここからテレビ局までは15分くらいだろうか。まだいける,,,いやスタイリストさんにいろいろしてもらうし厳しいか?
ーーーそれに、
「じゃ、行ってきます」
「焦って事故るんじゃないよー」
「あは、はい」
そこら辺にある帽子をひっつかみ、マスクをして外に出る。
10月の夜はやはり冷え込み、道行く人もみな首をちぢめるなり防寒体勢に入っていた。
帽子を深めに被って、町へのり出す。中高生も消えた闇の町のなか、俺に気づく人はいなかった。
あくまで、通行人。
あくまで、モブキャスト。
その感覚が無意味にも心地よくて、足取りも自然とゆっくりになる。
モブキャストは幸せである、と捉えることができる。物語の主人公である彼らのどん底を経験することも、幸せの絶頂を経験することもない。
何も知ることがないまま、最終的に主人公が落ち着く『普通の幸せ』を真っ先に手にいれるのだ。
怖いことなんてなにもない。振り返るほどの幸せもない。
それが一番幸せなのではないかと気づいたのは、いつのことだったか。
「はは、ははははっ」
無意識にも笑いが漏れる。
きっと物語の悪役は気づいていたのだろう。
自分がいつか、正義の名のもとに虐/殺され滅ぼされることを。
誰が正義かなんて、このご時世わかったもんじゃない。誰かの常識から外れて叩かれた時点で、正義は害悪に成り下がるのだ。
「ふふ、はははは」
きっと彼らは笑わずにはいられなかったのだろう。
恐怖に打ち砕かれそうになっている自分を、必死に誤魔化していたのだから。
「はぁ、いくか」
真っ暗闇の空のなか。スマホが震えたので歩くスピードを早めた。
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颯楓(プロフ) - 笹さん» わああありがとうございます!!!嬉しすぎて溶けそうです笑ちまちま更新ですがよろしくお願いします! (2020年8月18日 6時) (レス) id: 0a39adce2c (このIDを非表示/違反報告)
笹 - 初めてコメントを書かせていただきます! タイトルの付け方から本文までインテリジェンスが溢れてますね(( ymmtさんとko-chanのヤンデレが特に好きです! これからもぜひ作品を読ませてください!長文失礼致しました。 (2020年8月17日 22時) (レス) id: a74edc1ff9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:颯楓 | 作成日時:2020年8月9日 14時