フルーツは真っ赤なアップルが1番。【短編】

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「も〜来てもらうの大変だったんだから！」

「いやいやオフィスにほぼ来たことないんで、誘われても敷居高いんですよ！」

「こうちゃんも良かったら仲良くしてあげて、A俺らの動画見たことないらしいから」

「福良さん、余計なこと言わないでください」

「ほんと!?いっぱいAちゃんの問題使ってるのに！」



福良さん、山本さんと話している間も横からの視線を痛いくらい感じる。

なるべく目を合わせないように。

でも、相手に不快感を与えないように。

その場をやり過ごすことに徹した。



山本さんが気を利かせて謎班の皆さんを集めてくださったことで、その輪の中に自然と移動することが出来た。




良かった。




そもそもオフィスで忘年会を開催していることもあり、ボードゲームをする人もいれば、クイズ大会を始める人もいて、面白い会社だなぁと思う。





会も進み、最初ほどの盛り上がりはないにしても、話が尽きることはない。
色んな雑学とか、新しく始まる脱出ゲーム情報とか、本当に皆さん優しくて楽しみすぎてしまった。




「ちょっと風邪当たってきます〜」

「そこ出て左の突き当たり外階段だから！」

「ありがとうございます！」




言われた通り、左の突き当たりにあった扉を開けると、一気に冬の気温を感じた。

お酒も入って火照る体には丁度いい。

半階下の踊り場でボーッと空を眺める。




「ねぇ」

「え、あ、ここ使いますか？…………あ」



突然の後ろからの声に驚く。
そして、振り返って悟る。
逃げられないと。




「久しぶり、A」

「……久しぶり。こうちゃん」




退路を塞ぐように非常階段に腰を下ろす彼は、今も昔も変わらない。



「ま、まさかここで働いてるなんて知らなかったよ」

「俺もAがライターやってるなんて知らなかった」

「偶然ってあるもんだね」

「そうだね」




暫しの沈黙。
自分が勝手に気まづくなってるだけなのかもしれないけど、それでも居心地のわるさは半端じゃない。

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