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そのあと二本ほど動画を撮り、用事があるというふくらさんと河村さん、二人のプロデューサー枠が帰ったところで、活動もお開きになった。
夕飯時、午後七時を回ったころに残ったのは、オフィスに泊まるという伊沢さんと、私、川上さん、山本さんの四人だった。
みんな忙しい大学(院)生なので、カタカタとキーボードを叩く音だけが部屋に響く。
伊沢さんがソファ、私と川上さんがその足元、山本さんが向かい側の椅子に座っている。
そろそろお暇した方がいいかな?と思ったときに、伊沢さんが手を止め、ぐーっと伸びをしたのが目に入った。
『伊沢さん、お疲れ様です。お茶でも入れますか?』
「お、Aちゃん、さすがに気が利くなぁ。でもいいよ、それよりこっち来て話し相手になってよ」
相変わらずのスマートさで手招きし、ソファの自分のすぐ側をぽふぽふと叩く伊沢さん。
はい、と言って立ち上がろうとすると、隣から制止が入った。
「だめ」
片手で器用にキーボードを叩きながら、私の肩をすごい力で抑え込むのが、もうお気づきの通り、川上さんである。
「いいじゃん川上、たまには貸してよ」
「いやです。話すんなら俺挟んで会話してください」
横暴だ……。
伊沢さんに呼ばれ、川上さんに行かないでと止められる。三拓推しの私としては非常に幸せな状況を楽しみながらも、少々困るところでもある。
『川上さん。調べ物されてるんでしたら、会話の中にいると集中できないじゃないですか。終わったら、一緒にお話しましょう?』
画面を見つめて手の動きも止めないくせに、私の肩を掴む力は緩めない川上さんの目を見て諭すが、まるで聞いていない。
「Aちゃん、もててたいへんだなぁ」
『山本さーん、からかわないで助けてくださいぃ』
ははは、と笑うだけの彼は何もしてくれる気はないようだ。かわいいことだけは認める。
どうしようかと困っているうちに、隣の彼の手が止まった。そのまま流れるようにパソコンを閉じ、私の肩から手を離した代わりにそこに頭を落とした。
「おわった。ねる」
『えええ、ありですかそれ……』
顔が、近い。
ますます動けない状態になってしまった。
ずっと距離感が近いのでだいぶ慣れたつもりだったが、さわやかなシャンプーの香りが鼻をつくほど、近くに推し様の頭がある。
耐えれるわけ、ないでしょう。
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りんり(プロフ) - 莉華さん» ですので、莉華さんが良ければ、非表示を解除していただいても私が口出しするものではありません。もし気になる読者様から指摘がありましたらこちらで対応しますので、ぜひ気にせず執筆を続けていただきたいです。ご迷惑お掛けしました。 (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - 莉華さん» 返信が遅くなってすみません。また、わざわざ当作品を読んで下さり、対応ありがとうございます。私自身当作品が大して独自性のあるものとは思っていませんし、似たような作品ならむしろ読みたいくらいです。(↑続きます) (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
りんり(プロフ) - yukiさん» 返信がたいへん遅くなってすみません。報告、ありがとうございます。 (2020年6月28日 23時) (レス) id: 5d8255529d (このIDを非表示/違反報告)
莉華(プロフ) - yukiさん» 当事者です。この作品のことは全く存じ上げておらず、作品を作成しておりました。りんり様のこちらの作品を読ませて頂きましたが、自分でも凄く似ているな、と思いました。当該の作品に関しては非公開という形にさせて頂き、修正致します。大変申し訳ございません。 (2020年4月25日 20時) (レス) id: 907e72034e (このIDを非表示/違反報告)
yuki - すみません。似たような作品が作成されていますよ。(莉華様の「川上さんが甘々なんですが。」という作品です。) (2020年4月25日 0時) (レス) id: e5bfab260f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんり | 作成日時:2019年1月26日 22時