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そう言った途端千里の顔に影が差した。どうやら悩みの種の原因は合っていたらしい。
まぁ見てたらわかるけど。
「見た目は子供やけどなんやろうなぁ…純粋無垢では無い気がする、違う?」
「…まぁ純粋なんて感情は最近になって捨ててしまったし今の僕を誰しも一目見たらカラクリ人形にしか見えないでしょうね」
「自覚はあったんやな。弄れ過ぎやけど」
取り敢えず地に足を付けて千里の目の前に立った。千里 も「立ち話もなんやから」と俺の事を渡り廊下の軒下まで案内してくれた。
流石は由緒たる剣豪の家。家の中が物凄く広い。
「貴方歳はいくつですか?性格は子供みたいやけど」
「一言余計なんよなぁ…ま、ざっと200歳以上くらいはあるかな」
「爺やん」
「俺はまだそんなに老けとらんわ!」
千里は俺の事をいつも爺さん扱いしてきて馬鹿にしたりもしたし妖怪の住む山の話をすればそれはそれで興味を持って聞いてくれた。俺が屋敷に入り込めば今日はどんな話をしてくれるかとか期待しながら待っててくれてその時の表情は子供らしい子供に見えなくもなかった。
それで尚且つ千里がその一時だけを楽しんでくれるのなら俺は良いのかなと定期的に侵入をして話をしてあげた。
「__千里、部屋から抜け出して何をしておる」
しかし俺はそれに注意をしておらず忘れていた。千里の近くにいる頑固親父の存在自体を。
千里の首を絞めて強さと正義を貫き続ける一つの刀を。
「…なんでもありません。頭を冷やそうと少々軒下の方へと出ていただけです」
「お前に休息の時はない!なぜ分からぬか!己の隙を見せるなとあれほど」
「待てや!」
気づけば自分の体は千里と父親の間に入り込んでいた。千里の前に立って父親の教育理論というものを千里に擦り付ける姿があまりにも醜い争いに見えた。
「坂田…ダメです!ここに来ては」
「子供に押し付ける剣豪への未来がそんな横暴なものやとは聞いて呆れる。人間の命は儚く脆い、妖よりも短き人生だと言うのに自分の理想像を小さな体に叩きつけるとはアンタどうかしとるぞ」
「ほう。山神がこのような場所にわざわざ来て私に言う言葉は説教か。妖も私の考えを理解出来ぬとは随分思想が緩いものになりよった」
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夜紅茶(プロフ) - Naoさん» コメントありがとうございます!そんな前から見ていただいて嬉しいです!気長に続編を待っていただければ幸いです。 (2020年10月4日 19時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - この小説が書かれだした頃から見ているのですが夜紅茶さんの言葉選びは凄く人を惹きつけるもので素晴らしいと思います!続き待ってます!楽しみです! (2020年10月4日 18時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
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