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「まずは落ち着いてください。呼吸がまともに出来てませんよ」
話さえまともに届かなかったのが「息を合わせて」とリードされたことによって過呼吸になっていた自分の呼吸もだんだんと落ち着きと自我を鮮明にして取り戻していく。
けれども家族といた記憶をあまりにも簡単に失ってしまった罪悪感とショックは未だに抜けきることはない。
「…もう、私はどうすることも出来ないんです。全てを失ってしまったから」
着物の袖を力強く掴んで自分の瞳から涙が雨から零れ落ちる朝露が地面を濡らすかのように私が身につけている淡黄色の振袖に垂らして染みを広げては色を変えていく。
こんな異様に冷たいだなんて自分の人生の中では経験したことの無いほどの痛覚だった。それを今センラさんの目の前で弱音を零すほど自分が無力だと思ってしまうほどに自分の器では耐えきれなかった。
「＿＿俺がいますよ」
すると腕を引かれてそのままセンラさんの腕の中へと収めこまれた。菊の花の香りが凄く心地よくて冷えきっていたものが少しずつ溶けていくような感覚がした。
「Aが失ったものは完璧に俺が埋めることは出来ひん。Aにとっての思い入れは世界に一つしかなくて価値が物凄く大きいものやから。…でもその隙間は無理に思い出さんくてもええ。代わり俺が傍におるから」
「センラさっ…」
「やからそんなこと言わんといて。生きる価値とか権利とかそんな決まり事は人にはないやろ？Aの人生はAのものやから」
頭を絹を撫でるかのように優しく暖かく触れるその手が今まで焦っていたり落ち込んで混沌としていた緊張感を緩ませてくれた。
そこから来た安著の涙なのかボロボロと零れてその体に手を回した。
┈┈••✼••┈┈
すやすやと無防備に純朴な顔で眠る一人の小娘。警戒することも無くそのまま疲れによって眠ってしまっていた。
横抱きにして俺はAが元いた部屋に運ぶために引き返した。
(まさか、こんなにも早く気づかれるなんて予想外だったわ)
けれどもあそこまで手を無意識に出してしまう自分にも驚いていた。
人間なんて俺よりも身分も低いし無力だ。それになんの力も持っていない呑気な輩かと思い込んでいたけれどもAは感情豊かで且つ鋭い頭を持っていた。
(…情なんてあらへん)
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夜紅茶(プロフ) - Naoさん» コメントありがとうございます！そんな前から見ていただいて嬉しいです！気長に続編を待っていただければ幸いです。 (2020年10月4日 19時) (
レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
Nao(プロフ) - この小説が書かれだした頃から見ているのですが夜紅茶さんの言葉選びは凄く人を惹きつけるもので素晴らしいと思います！続き待ってます！楽しみです！ (2020年10月4日 18時) (レス) id: b92cb2f456 (このIDを非表示/違反報告)
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