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会場に着いた頃には先程までの外の世界とは打って変わった景色が広がっていた。
大きなダンスホールの中には眩しすぎるシャンデリアが飾られていて、初めてのことだらけに驚きが隠せない。
「お集まりの皆様」
その一声が会場一体に響きわたり参加者の女性達は一斉に壇上の方に振り返る。そこには黄褐色の髪が明かりの下で輝き、こちら側に笑顔を向けていた。
「本日はトゥルース主催のパーティーへようこそ。主催の天宮翔太と申します。」
彼は確かトゥルースの代表貴族なはず…あの賑やかな貿易街を造り上げ、若くして権力者の地位を獲得されたとか…
周りの女性の方に視線を戻してみるとうっとりとした表情で天宮様に熱い視線を送っていた。
多くの女性から支持されているのだろう。容姿端麗で爽やかな感じが女性を惹きつけているのがよく分かる。
「そして今回は六つの国々からも代表する貴族がお見えになっています。どうぞごゆっくりお楽しみください。」
そういえば奥様からそんなことを聞いていた。代表貴族による求婚者探しの為のパーティーだと。
けれど私には微塵も関係ない話なのだろう。私の本来の目的はパーティーに参加することで色恋沙汰に浮かれている場合では無い。
せっかく城の中に入れたんだし庭園の方に行ってみようかな…なんて呑気なことを考えていた。
そしたら偶然にも緑色の貴族服を纏った花萌葱の色の瞳とぶつかった気がしたが気の所為だろうと思いそのまま流した。
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「うらたん、どうしたんです?遠くになんか面白いもんでもあるんですか?」
「…いや、別に」
集まった女達が騒ぎ声を立てる中、唯一俺らの存在に興味を示さない奴が一人だけいた。一瞬こちらと視線が交わったが、そのまま視線は逸らされた。
カラスのような濡羽色の髪を揺らし城の入口へと通じる扉をそっと開けてそのまま出ていくところが見えた。
(あんなやついたか?)
貴族の名は大体の奴らの名前だけを聞けば分かるはずだが、あんな清純そうな女には見覚えがなかった。
(…アイツ、面白そうだな)
「ごめんセンラ!俺用事出来たからあとは任せた!」
「えっ…ちょ、うらたん!?」
俺はいてもたってもいられなくなりそのまま彼女の後について行ってみることにした。
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2019年3月18日 7時