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「…今日は大変お世話になりました。」
「いいよ、別に。返事決まったら手紙で知らせてね?」
「はい、なるべく早めに連絡します。」
「そっちの事情もあるんだしゆっくりでいいよ。じゃあね。」
馬車の扉が閉められ、出発したあとも彼女はおれの後ろ姿を見ていた。多分見惚れたとかそういうのはないと思う。
普段の自分の素の姿を女の前に出したのはあまり無かった。いつもはマナーに沿って敬語ばかり話し込んでいたが、何故かあの子の前では自然と疲れなかった。
(…秀麗な使用人)
彼女は城に配属されてもおかしくないと噂されている。立ち振る舞いから細かな気遣いまで何もかもが繊細とのことだ。
容姿端麗、様々な国の貴族達から好意を持たれるのも案外今日話してみて分かった気がする。
自らの意志を表現せず、そして他人を犠牲にすることを嫌う。それならいっそ自らの身体や精神までも差し出す。例えるなら羽のようにふわふわとした優しさだった。
_“センラさんが言っていたことが本当のことなら”
だからこそ一番危険で、一番無くなったら困ってしまうものは“彼女自身”なのだろう。
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作者名:夜紅茶 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2019年3月18日 7時