ガラスの花に麗しいキスを【歌い手】 (ページ27)

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何やねん…何やねんあの女。

部屋でイライラしながら書類を片っ端から片付けていく。

いつもの奴らなら濃い化粧に香り強い香水を身に付け自分の赴くままに近づいてくる。軽い罵声を浴びせてその場をしのぶことだって多い。

(なのに…)

夜の底のように艶やかな黒の瞳のアイツは変な気遣いをしようとしていた。自分自身のことを犠牲にしようとしていた。

もしも今頃殺していたとなると…そんなことまで想像してしまった。別に女には興味の欠けらも無いのに。

「さーかた」

後ろから突如呼ばれ「何やねん」と俺はきつい言い方をしながら振り返った。するとそこには天月が面白そうな笑顔を浮かべながらそこに立っていた。

天月の爽やかすぎるくらいの笑顔は逆に腹立つくらいだけどな。

「今日お客様が城に来客したって聞いたんだけどさ、一体どんな子？」

俺の手に握られていた万年筆のペン先が音を立てて折れたのが分かった。

「…何？」

「いやぁ…坂田人殺ししようとしてたでしょ？」

この男はつくづく悪趣味なことをする。覗いていたなら先に言ってくれと怒鳴りたかったが天月は言葉を遮った。

「珍しいよね、あの浦田さんが連れてくるなんて？」

小指を立てて「これ」と見せつけてきた。その時怒りより疑問の方に思考が回った。うらさんが女の子を連れてくるなんて滅多にないし、色目を使ったとしても効かないはず。

目の前の天月はくすくすとピエロのように笑っているが俺はいつの間にかたくさんの疑問を抱えてしまっていたらしい。

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