ガラスの花に麗しいキスを【歌い手】 (ページ23)

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何も考えず足を進めて、気がつけばトゥルース城の庭園の方に出向いていた。

うらさんの住むサニーフォレストの方が自然が溢れてるし花の種類も多く行き届いた環境だけど、ここの庭園も中々綺麗なものだ。

…けれど、そこには一人先客がいた。俺の身内に見覚えのない奴が。

「綺麗な花…」

見るからに使用人らしき格好をしてるけど、この城にあんな顔ぶれはいなかった。ということは侵入者か？

するとこっちの気配に気づいたのか俺の顔を見たあとに姿勢を正しお辞儀をした。

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「…お前誰や」

彼は猜疑しているかのような感じで私に対して深い真紅の瞳でガンを飛ばしているような雰囲気だった。

その冷ややかな瞳に私は背中あたりがゾクッとなり、声が震えないように現状の自分自身の感情を押し殺した。

「トゥルースの街にある老夫人の奥様の屋敷に務めさせて頂いております。」

「俺が聞いてるのはそういうことじゃない。どこから侵入してきた？」

私は彼の侵入という言葉に対して疑問を感じた。どうやら私のことを侵入者か何かと勘違いしているらしい。

「あの…私は侵入者ではありません。」

「だったら何者？」

「私は….」

そこで私は先程までのある会話をふと思い出した。

『もし、赤髪の貴族服を着たやつに会ったらすぐに逃げろ。最悪、捕まりそうになったら俺の名前を出せ。』

『何故ですか？』

『＿＿＿一番危険なのがアイツだからだよ』

赤髪の貴族服…今、目の前で私に疑いの矛先を向けられている彼がそうだ。

けれど私はあえて浦田さんの名前を出すことを黙ることにした。今名前を出すとそれこそ浦田さんの迷惑だ。

「…なんや、答えられへんの？そんなんはただのハッタリやんか」

「ハッタリなどでは…！」

彼は私の言葉を遮るかのように後ろに回り込み、首元に短剣をあてがった。動こうにも動けなくて蛇に睨まれたカエルのような状態になってしまった。

後ろから感じる険悪な雰囲気に飲み込まれそうになる。

「もう一度聞くから正直に答えろ、お前は侵入者か？」

「…っ」

正直に答えてしまえば楽なのかもしれない、けれど私は浦田さんの名前を軽々しく出して命乞いをしたくはなかった。

それこそ浦田さんに迷惑をかけてしまう。

「…何も答える気がないのなら、肯定と受け取る」

そのままナイフを振り下ろされ＿＿＿＿＿

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