sugar×31 ページ32
・
それからは空中散歩のように宙を浮きながら家へと帰った。初めて肌に直で感じた空の景色なのに不思議と興奮したりとかそんなことも無く一言も喋らずに志麻に運ばれた
ベランダから部屋の中に入りベットの上に降ろされてされるがままに靴を脱がされそのまま私の部屋から出ていった。
…素直にお礼が言えなかった。
助けてくれてありがとう、とか自分の言葉で言いたかったはずなのにそれすらも胸の中に留まり喉の辺りで止まって塞ぎ込んでしまった
「なぁに不貞寝してんの。起きろこのバカ」
いつの間にか志麻はこっちに戻ってきていて視線だけを移すと片手にはりんごジュースが入ったコップを持っていた。
バカとは失礼な、バカとは。
「…なんで、助けてくれたの」
大義名分なんて大層な関係とか私達の間には何も無かったはず。けれどもなぜあんな必死になって助けてくれた理由がどこにあったのかが純粋に気になった
…聞き方ぶっきらぼう過ぎたかな。
まぁ返ってくる言葉なんてどうせ契約者だからとかそういうのだろうけど。
「…今朝の見返り用」
「え?」
「お前どうせお礼とか後から求めてくるやろ?…だからそんなめんどい事起きないように」
朝食見返りとか私はそんなことも気にも止めていなかったのにお返しとかそんな優しいことを考えていてくれるとは思ってもいなかった。反射で志麻の顔を覗けば少し耳元が赤くなっている気がした。
…なにこれ、めっちゃ貴重すぎる。
「覗いてんじゃねぇよ。とにかくこれ飲め」
「ちょ、あはは!顔赤い!」
照れ隠しなのかどうなのか分かんないけどりんごジュースを無理やり押し付けてきた。けれど今の私には物凄くレアな瞬間が見えて志麻のことを弄りたくなった。
や、やばい。めっちゃ面白い。
「…っ、このやろう笑ってんじゃねぇよ!」
すると志麻はりんごジュースを自分の手に戻してそのまま一口含んだ。あぁとその様子を見ていると急に志麻の顔が近づいてそのまま唇を押し付けられた
志麻の口から流れ込んでくる液体がほんのり甘かったような気もしたけれどもりんごの味がよく分からなくて気がつけば唇は離れていた。
「ほら、収まった」
優艶に笑う志麻に対して私は時が止まったかのように静止しているとペロリと志麻の舌で唇をなぞられて思わず自分の体に痺れが入った。
・
184人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
夜紅茶(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!続編を希望していただきありがたいです!一応こぼれ話としてなにか書けないか検討してみます! (2022年4月2日 11時) (レス) id: 2017f33955 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - とてもよかったです!その後話が欲しい! (2022年2月21日 4時) (レス) @page50 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - さざんかさん» コメントしていただきありがとうございます!今後も作品を見守っていただければ幸いです! (2020年4月13日 9時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - 普段全く他の方の作品にコメントする事はないのですが、この作品は本当にドストライクなので初コメ失礼致します…!完結おめでとうございます!悪魔と天使のお話も凄く深いなと思いました。。伏線も凄く気になります…!今作品関連作品が出たらまた読ませて頂きます!! (2020年4月13日 2時) (レス) id: 63429259c8 (このIDを非表示/違反報告)
ヨル(プロフ) - コメント、評価をしていただきありがとうございます!ご期待に添えるよう努力していく次第なのでよろしくお願いします! (2020年4月3日 22時) (レス) id: 676346443e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ヨル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/qZN5vxyJ6V2/
作成日時:2020年2月24日 22時