金魚鉢。 (ページ34)

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３４─TH side─ ページ34

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久しぶりに友達と食事に出掛けた帰り、
そう言えばアイツの店の近くだ！なんて
思って何気なく寄ってみると、

営業時間終わりで締まってるけど、
店内の明かりの中にアイツが居るのを
見つけてドンドンッと何度か叩くと

一瞬びっくりした顔けど、俺だと
気付くと“なんだお前か”みたいな
顔して店を開けてくれた。

『何やってんのこんな遅くに。』
「え、友達とご飯食べてたー。
あ、コーラとかそんな気を遣わなくて良いからねー。」

カウンターの中に入っていった
Aにそんな事を言いながら
適当なテーブル席に座る俺に、

『はい、たまにはこれ飲みな。』
「なにこれ。」

『特製野菜ジュース。
野菜嫌いは体に毒だからね。』

「将来うるさい母親なりそー。
まぁ、コーラで割ったら飲んでやってもいいよ。」

『あーそう、飲むんだね？
コーラで割ってマズくなったのでも
ぜーんぶ飲むんだね？よし分かった。』

「あ、いや、このままで大丈夫でーす。」
『ふっ、よろしい。』

何でなのかは知らないけど、
こんな風に毎回毎回、
ちょっとした言い合いをするのが
いつの間にか俺とコイツの定番。

前にジミナとグガと一緒に来た時、

JK『テヒョンイヒョンがこんなに素で接してる女の人初めて見ました。』

なんて驚いてたけど、
でも、俺自身がたぶん１番驚いてる。
最初が最初だったからなんだと思うけど、

コイツの前では変に気取らなくて
済むから落ち着くんだよね。

「お、これなら飲める。」
『おっ！それは良かった♪
あんたが飲めるなら他の野菜嫌いの方にもお薦めできるわ♪』

そう言ってたまに見せてくれる笑顔に
心臓がトクンッと音を立てたり、
ジミナの前だけで見せる柔らかい笑顔を
横で見てて少しだけモヤッとする気持ち。

それに名前を付けてしまったら
きっとバランスが崩れてしまうから
分からないままでちょうどいい。

それはこれからもずっと変わらない。

店内の掃除をしているAを眺めていると、

どこかに違和感を感じた気がした。

何が違うのかは、目を凝らしてみても
分からなかったけど。

「ほら、そろそろ帰りな？」
『うん、そうするー。』

そう言って外に出て行く途中、
小さな声で

“いっつもそう…”

なんて呟く声が聞こえた気がして
振り向いたけど、
手を振って見送るAが居たから
気のせいかと思って、

「またね。」

それだけ言って
タクシーに乗り込んだ。