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『..最後にしよ思て。』
───────────…
────…
「...え、」
それは突然...
何の前触れもなくやって来た。
裕くんに呼ばれ、
いつも通り、ホテルの一室。
『..わざわざ呼んで言わんでもとは思ってんけど、お前とはちゃんとしたかってん。俺の話、聞いて？』
「...ぃゃ…聞きたく、ない。」
『聞いてくれ。あのな、』
聞きたくない、何も聞きたくない。
首を横に振ることしか出来ない私を
そっと抱き締めた裕くん。
『...俺さ、ぎょうさんお前のこと苦しめて来てしもた。
お前が俺のこと好きなん知ってて、お前が俺のこと大切にしてくれてんの知ってて、
それなのに俺は苦しめ続けるだけで..何も背負ってやれへんかった。
それは、これからやって同じや思うねん。』
そんなの、そんなの求めてない...
裕くんの目に映りたい、
たったそれだけしか求めてないよ..
その為なら、何も苦しくなんかないのに
何を言ってるの？
「...それで、いい。背負わなくて、いい。」
『うぅん、背負わんでえぇは、違うねん。
俺もお前もずっと間違うてしもうててん。』
「...間違って、ないよ。」
『まぁ、間違う言うよりか気付かんふりしてたって方が正しいな。
...やってお前、女の子やもん。』
“オンナノコ”
裕くんから発せられた単語が
頭の中で木霊する...
「...おんな、の、こ。」
『ん、そやで。
高級な女でもなんでもない。
街歩いてる何も変わらん普通の女の子やで。
ほやからもう、終わりにしよ。』
オワリニシヨウ…
「...なに、それ。意味、わかんない。
わかんないよ！！！！！！」
『ちょ、落ち着け、落ち着けって！！！』
もう、何もかも分からなくなって、
頂いてた料金分の時間の事も忘れて、
部屋を飛び出した。
「……はぁっ、はぁっ、」
もう、
ナニモワカラナイヨ...
自分のしてきたことも、
自分の気持ちも、
でも、
分かってしまうのは、ナゼ...
裕くんの瞳の中ではもう、
泳ぐことは、ない...
走り疲れて立ち止まった私の姿が、
月夜に照らされてショウウィンドウに映る。
ねぇ、知ってる？
金魚はね、金魚鉢の中だから
美しく生きられるって話。
野に放してしまったら、
ただの醜いフナになる。
ほら見てみなよ、
裕くんの金魚鉢から放たれた私を。
「...ハハッ、醜い、フナがいる。」
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作者名：ぽん | 作成日時：2019年10月2日 16時
