金魚鉢。 (ページ12)

今日:2 hit、昨日:7 hit、合計:54,488 hit

１２─TH side─ ページ12

───────…

昨日、ジミナの部屋から戻った後
あの女に言われた事が頭にこびりついて
全然眠れなかった。
男としてのプライドをへし折られた
気分になって、むかついて。

どうしてやろうかあの女...

なんて思ってたけど、翌朝の
ジミナの様子を見たらそんな気持ち
どころじゃなくなった。

だって、なんだか少し寂しそうで
それなのに、幸せそうな顔しちゃって。

東京から大阪に移動する時の、
あの黄昏れ様ったらない。

そんなんでARMY達にちゃんと会えるの？
って感じ。
今すごく大事な時期なのに、
本気で惚れるなんて、それはマズいだろ。

だから俺はスタッフに、

テヒョンジミナが昨日まで呼んでた女、俺のとこに今日呼んで。じゃないと次の日ライブ出ないから。

なんて、無理言って呼んで貰って今に至る。

『その、人を試すみたいなのクセなの？』

なんて冷めた目で微笑みながら
俺を見るこの女...

全然なびかないなコイツとか思いつつも、
実は気が合うんじゃないかって思う。

だって、

『まぁ、ちょうどいいわ。さっきココに入るのジミンさん偶然見ちゃったみたいだし、私があなたにも抱かれたってことでどう？』

なんて言ってくれるんだから。

TH「ははっ、それ俺すごい悪者じゃん(笑)」

『そうね、でもまぁ私には関係ないし。』
TH「冷た。」

『でもこんな事位じゃ、あなたとジミンさんの関係は壊れないでしょ？』
TH「まぁねー。」

『そう、本当に友達思いなのね。お陰で迷惑極まりないけど。』
TH「へへっ。じゃあ迷惑ついでに教えてよ。」

『何を？』
TH「あんたはお金？それかただのヘンタイ？」

『は？そんな事聞いてどうすんの。』
TH「ただの興味本位。」

俺がそう言うと、
女は１つため息をついて

『..好きな人の瞳に、一瞬でも映るためよ。』

そう言って、前を見据えて微笑んだ。
その横顔は、
あまりにも儚くて息を呑む位に綺麗で。

なんか調子狂う感じがしたけど、

「なにそれ？」

そう重ねて聞けば、

『あなたの目に映った私を羨む人は何人いるかしらね？』

───────────…

───…

彼女はひとしきり淡々と話し、
それを終えると、

だからジミンさんの事は任せたわね、
なんて言って立ち上がり、

『今日仕事してないから。』
そう言って茶封筒をテーブルに置くと
振り向きもせず出て行った。

救いようのない、バカな女。

いや、救って欲しいなんて思ってないか。