褪色する春＿skab

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「っしょ。
あ、よっしゃ！
めちゃめちゃ良くない？」
「んははっ、阿部ちゃん大成功。
いえいっ！」


そう言って佐久間が録画を停止した。


「まじで美味そう。」
「佐久間の方のも期待してるからね。」
「任せといて。」


自信有り気にニパッと笑われる。
俺の作ったハンバーグが焼けて、皿に移した。


「じゃあバトンタッチ。」
「俺がハンバーグ焼く王だー！」
「なんかゴロ悪くない？」


突っ込んだら、んはははっ！とそれはそれは楽しそうに笑われた。
そしてそのテンションのまま楕円形とハートのハンバーグはフライパンに並べられた。
俺も自分のスマホを取りに行って、


「はい、じゃあ佐久間頑張って。」


ちゃっかり動画をまわす。


「見ろ、俺のテクニック！
…、あーっ！」
「うわ最悪。」


ハートの端っこ、欠けた。


「ええ、ごめーん！」
「俺これ食べんのー？」


食べるけどね。
でもちょっといじってみる。


「込めた愛情は変わんないから！」
「なんだそれ。」


よく分かんない言い訳にくすくす笑う。


「ほら、こっちもやるから！」
「はい、頑張って。」
「んー、ほいっ！」
「おおー。」


楕円形は成功。
両方焼きあがったらこれまたお皿へ。



準備を整えるとローテーブルに二人並んでいただきますをする。


「あ、ケチャップかけたげる。」
「俺のに佐久間がかけんの？」
「そう、貸して。」


ハンバーグのお皿を没収される。
そうしたら欠けたハート型の上に佐久間がケチャップでハートを描いた。


「修復作業？」
「や、そこは萌え萌えきゅんって言ってよ。」
「それケチャップかけた側が言うんじゃないの？」
「んはっ、俺めっちゃ真剣に無言で描いちゃった。」


くはははって、二人揃って笑う。


「こっちは阿部ちゃんの好みの量でどうぞ。」


楕円形の方はセルフサービスらしい。


「了解です。」


こんなもんかな、って量をかけて佐久間へケチャップを手渡す。
そうしたら佐久間は歌でも歌うように


「萌え萌えきゅんー。」


と言いながら、俺が作った佐久間用の楕円形のハンバーグにハートを描いていた。
俺の気持ちが滲み出したみたいで、俺が描いた訳でもないのになんだか気恥ずかしかった。

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