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結局その後も何組かケーキを買いに来るお客様はいたものの、男の子は現れず。
心にもやもやを残したまま、閉店時間。
「Aちゃん、帰ろう」
とっつーは用事がある、と慌てて帰り、残った私と塚ちゃんで一緒に帰ることになった。
暖冬とは言え、夜はかなり冷える。店を出てからすぐに冷えてしまった指先にはあーっと息を掛けると、白い息がもわんと広がった。
「あれ」
すると塚ちゃんが突然、私の手を取ってまじまじと見た。
「ん、なに？」
「荒れてる」
「あー、冬は乾燥するから」
「いつも？」
「うん、割と」
「気付かなかった…」
塚ちゃんがしょんぼりした声でそう言って、
「ごめんね、洗い物させちゃった」
と、そのまま大きな手で私の手をぎゅ、と包んだ。
「何言ってんの、あれは仕事だし」
こんなことで仕事が免除されていたら、世の手荒れに悩む女性たちはどうしたらいいの。
そんな風に笑うと、そっか、そうだよね、なんて塚ちゃんも笑った。
でも、塚ちゃんの優しさが、疲れた心にじんわりと温かい。
「そういえば、魔法のケーキってなんだったの？」
塚ちゃんが、思い出したように言う。
きっと、塚ちゃんの中にも何か引っかかっていたのだろう。
「んー…わかんないんだよね。結局、あの子帰っちゃったみたいだし…」
「何も買わずに帰っちゃったんでしょ？」
「うん、そう」
なんとなく上を向いて、あの男の子の顔を思い出す。
優しそうだけど、きりっとした顔立ち。とても、意志の強そうで真っ直ぐな瞳。
「魔法ってなんだろ…そういうのがあるのかなあ」
「結構長くここにいるけど、聞いたこと無いよ」
「他のケーキ屋さんにはあるとか？」
「ん〜、でも俺も知らないな〜」
2人でうんうん唸っていても答えは出ないのだけど。
それでも一緒に考えてくれる塚ちゃんはやっぱり優しい。
「まぁさ、きっとその子も、いろんなお店を探したり、調べたりするんじゃないかな」
そんな風に塚ちゃんが言って、分かれ道に差し掛かる。
明日が勝負だよ、頑張ろう、なんてお互いに言って別れた。
あの男の子は、もう魔法のケーキを見つけてしまっただろうか。
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ろっか(プロフ) - お話めいっぱい書きすぎてあとがき入れられませんでした！！この計画性の無さ！！なのでコメ欄で失礼します。お読み頂きありがとうございました！あとがきはTwitterにでも載せます(笑)…ろっか (2019年12月27日 0時) (
レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろっか | 作成日時：2019年11月3日 16時
