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「ほい、小さいやつだけど」
郁人が、小さなタルト・タタンを皿に乗せ、客足が幾分か落ち着いたカフェまで持ってきた。
ついさっきまで、りんこちゃんと良亮はふたりで遊んでいたみたいだ。
結局、今日はいつもよりも落ち着いていて、厨房はタルト・タタンが焼きあがるまでの小一時間、郁人ひとりで回してしまった。なんという男だ。
「ありがとう」
「おう、貸しイチな」
そう言ってにやにや笑っているこの男が作ったお皿の上のタルト・タタンは、キャラメリゼされたりんごがつやつや輝いていておいしそうだった。
とっつーにエスコートされて、お姫様みたいな椅子に座ったりんこちゃんは、目の前に置かれた皿を見て「うわぁ…」と嬉しそうなため息をもらした。
「さんかくじゃない」
「小さい型使ってホールで焼いてるからね。切り分けてないんだよ」
ひょい、と現れた良亮が、さも自分が作ったかのように説明する。
その説明を聞いているのかいないのか、りんこちゃんはフォークを持つと、ぱくり、とタルト・タタンを口に入れる。すると、りんこちゃんはそのまま無言で、次々に口に運び始めた。
その様子を、私も、郁人も、すぐに厨房に帰った良亮も、他のお客様の相手に戻っていったとっつーと塚ちゃんも、それからいつもの席で仕事をしていた支配人も、にこにこと見つめていて、温かい時間が流れていた。
「…わたしもつくる」
「え？」
やがて、ものすごい勢いでお皿をカラにしたりんこちゃんが、かちゃん、とフォークを置いて言った。
「これ、おかあさんのに似てる！わたしもつくる！つくれるようになる！」
あまりにも真剣で、必死なその表情に、誰も反対なんてできなくて。
「じゃあ、俺が教えるから一緒に作ろうか？」
郁人が提案する。
うんうん、そうしなよ。それがいいよ。とみんなが口々に言う中、りんこちゃんの顔にさっと緊張が走った。
「やだ、りょーすけくんがいい…」
りんこちゃんは、ぱっと良亮の背に隠れてしまった。
「りんこちゃん…？どうしたの？」
「…こわいの、やなの。りょーすけくんといっしょにつくるの」
蚊の鳴くような小さな声で、りんこちゃんがそう言った。
「郁人が怖いんだって」
笑いながらりんこちゃんの声を通訳すると、良亮は苦笑いして、郁人は「まじか…」と項垂れた。
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ろっか(プロフ) - お話めいっぱい書きすぎてあとがき入れられませんでした！！この計画性の無さ！！なのでコメ欄で失礼します。お読み頂きありがとうございました！あとがきはTwitterにでも載せます(笑)…ろっか (2019年12月27日 0時) (
レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ろっか | 作成日時：2019年11月3日 16時
