五つ星 ページ2
・
「あ！Aちゃんおはよう！」
「おはよう、良亮」
奥の厨房からぴょこん、と顔を出したのは、うちの店で一番若いパティシエの良亮。
「おい、だから速くスポンジ出して！切って！」
「うわ、やべ」
もう一人のパティシエ、郁人に怒られて、下をぺろ、と出した様子から察するに、さほど反省はしていないみたいだ。
「…朝から忙しそう」
思わずぼんやりとそう呟くと、隣で支配人が「めっちゃ他人事だな」と肩をゆすって笑った。
「そういう支配人だって、他人事じゃないですか」
「うちのスタッフは優秀だからね」
「会話が噛み合っていないんですが」
「さ、今日のケーキ何かな〜」
ふらふらと逃げるように去っていった支配人の背中に、「仕事してくださいよ…」と声を掛ける。きっと届いていないけど。
そして私は、ショーケースの向こう側、私の仕事場へと向かった。
ここはパティスリー五つ星。
ここは街の大通りから、少し外れた路地裏にある、知る人ぞ知る、洋菓子店。
レンガ造りの可愛い建物で、レトロで重厚な扉を開くとそこには、パリで修業を積んだ凄腕パティシエがつくるキラキラしたケーキやチョコレートが並ぶショーケース。そしてその右側には、それなりの広さの、カフェスペース。ここにもキラキラしたギャルソンが２名ほど。
ショーケースの向こう側、キッチンとの間には、支配人の部屋と小さな事務室が並んである。この事務室が、私の仕事場。
店の金銭的な管理や経営策の考案なんてところから、店先に出す看板のデザインやケーキのポップ作りまで、ありとあらゆる店の雑務を請け負っている。事務と言えば聞こえはいいけど、まぁつまり、便利屋というか、雑用係。
イベントの時や繁忙期なんかは、接客やレジも担当するのだから、便利屋と言った方が正しいかもしれない。
「さて、仕事するかぁ」
事務室の、私好みに模様替えしたレトロなテーブルを前に大きく伸びをして、私の一日は始まっていく。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 48人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ろっか(プロフ) - お話めいっぱい書きすぎてあとがき入れられませんでした！！この計画性の無さ！！なのでコメ欄で失礼します。お読み頂きありがとうございました！あとがきはTwitterにでも載せます(笑)…ろっか (2019年12月27日 0時) (
レス) id: 2af5960142 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ろっか | 作成日時：2019年11月3日 16時
