隣 人 さ ん ≪ Kei.I ≫

隣人17. パティシエ ページ17

あれから伊野尾くんは

カップケーキやらクッキーやらケーキやら…。




物凄くたくさんのスイーツをお皿に乗せ、

目の前のテーブルに並べた。






「Aちゃん…ジュースがいい？

それとも…ココアとかの方がいい？」


そんなことを聞いてくる伊野尾くんはきっと優しい。

…わざわざ飲み物も聞いてくれるなんて。





『ジュースがいいです』


「ふふっ…じゃあ俺もジュースにしよっと！」


なぜか嬉しそうな伊野尾くんは無視。

私の目には目の前のスイーツしか映っていない様子。






たくさんのホイップクリームやら可愛いビーズの飾りつけまで。

まるで伊野尾くんが作ったとは思えないカップケーキ。




焼き加減もばっちりでとにかくトッピングが可愛いクッキー。





新鮮な果物が綺麗にたくさん並べられているタルトケーキ。





まるでスイーツ店のようで胸が弾んだ。







『これ全部伊野尾くんが作ったんですか？』


呑気にジュースを注ぐ伊野尾くんに聞いてみる。




「カップケーキとかクッキーとかは俺が頑張ってつくったけど。

ケーキは美味しいお店で買ったよ。」


そんな伊野尾くんの言葉に驚きが隠せない私。

クッキーも伊野尾くんの手作りだったんだ。







しばらくすると、

グラスにジュースを注いだ伊野尾くんが戻ってきて。



そんな伊野尾くんは私の向かい合わせに座った。






『「いただきます」』


早速、目の前のカップケーキを手に取る私。

そしてそのままぱくっと口に運んだ。





口の中に広がるホイップクリームの甘み。

友達とスイーツ店に行ったときよりも美味しかった。








『…伊野尾くん、パティシエになれるんじゃない？』


気づけばそんなことを呟いていて。

自分でもその言葉にびっくりしてしまった。





「ふふっ…お菓子作りは趣味だよ！趣味！」


『いやいや！パティシエになれる！絶対！』


自分でも何を言ってるのか分からない。

でも…それぐらい美味しかったんだと思う。






「Aちゃんがそんなに言うなら…頑張ってみようかな」



私の顔を見てどこか嬉しそうにそう言った伊野尾くん。








…もし伊野尾くんがパティシエになったら私が一番のお客さんになろう。









なぜかそんなことを思う自分がいた。

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