◇*-10-*◇ ページ10
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「……大橋くん…」
「さっき、お店出た時から気になってて…」
「…」
「安心した」
…もしかして、私をここまで連れてきたのは気付いてたから？
私がまだ、この夢から覚めたくないって、
そう思ってること、分かってたから……？
ーー胸の奥に閉じ込めた、想いが一気に溢れる。
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「…あ、危ない危ない。忘れんうちに渡さんと」
「…？」
「今日、付き合ってくれたお礼」
“開けてみて”
そう言われて、彼から手渡された小袋に入っていたのは
「……これ、って……」
私が見ていた、買うのを迷っていた、あの柴犬。
「…何で、……」
「凄く欲しそうな顔してたから」
「…っ…」
「本当に気持ちやけど、受け取ってほしくて」
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「これからも、なにわ男子をよろしく！」
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大好きな彼が
私の大好きな、太陽の笑顔で
右手を、差し出した瞬間。
やっと…解けた。
彼と重ねた、“夢”の時間が。
「…これからも、影ながら応援してます。無理せず、お仕事頑張ってください」
左手にありったけの想いを込めて、あなたと握手を交わす。
大きく綺麗な手のひらが、私の止めどない気持ちを1粒残らず掬ってくれる。
「ありがと。みっちーと、俺らのファンとして居続けてな！」
「…もちろんです」
最後の最後まで、推しを勘違いされたけど。
そんなところさえ愛しいと思えた。
「そうや！みっちー、Aちゃんにファンサしてあげて？」
「え」
「急に振ったな、はっすん(笑)」
「俺との握手より喜ぶから！リクエスト聞いてさ」
「やってさ、みっちー。ファイト！」
「じゃ、…何が良いですか？Aちゃん…」
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「……A、ちゃん…？」
「……っ…………」
……愛しい、
何もかもが、…好き過ぎて。
私には到底、抱えきれないぐらいの“夢”だった。
「、…ごめんなさい。本当にありがとうございました。…私はこれで失礼します」
「…Aちゃん！」
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溢れ落ちる、想いの欠片。
二度と入ることのない、きらびやかな世界の道を
無我夢中で後ろを振り返ることなく…走った。
「お疲れ様」
「…マネージャー」
「あれ、どうしたのみんな…何かあった？」
「……いや…」
「…？、みんなにファンレター届いてたよ。分けるね、これは和也の分」
「あ、ありがとうございます……」
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作者名：clover
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php
作成日時：2021年11月22日 14時
