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side gleen
「ちょ、北斗!」
学年でもなかなか足が速い方の北斗はすぐに教室から出ていった
まあ大方屋上にいるんだろう
北斗と初めて会ったのも屋上だったし、北斗にとって屋上は特別な場所みたいだった
「追っかけなくていいの?」
走り去る北斗の背中を呆然と眺めていた樹に声をかける
「ぇ、あぁ…」
「…ねえ樹、」
「やめろ、言いたいことわかってんだよ」
「ならどうにかしてよ」
何度か樹に話してきたことがある
それはこれ以上不必要に北斗を傷付けないでほしい、ということ
俺の目から見ても北斗が樹を好きなのは明らかで、
そして樹が北斗を大切にしているのも明らかだった
なのに何故だか互いにはうまく伝わり合っていなくていつも傷付けあって、
そんな二人がもどかしかった
「あー…何でいつもこうなんだよ」
せっかくヘアセットしただろう髪を掻きむしる樹は、周りに女の子を侍らせている時よりもずっとかっこいいと思う
「そのまま素直になれば?」
「出来たら苦労しねえよ」
「そもそも女の子と遊ばなきゃいいじゃん」
北斗が傷付く原因は大抵それなんだから
そこさえやめてあげれば北斗だって少しは…そう思うのに樹の眉間の皺は深くなるだけだった
「…昔さ俺が告白されたことがあって。俺は北斗がいれば良かったから断ったんだよ。そしたら次の日から北斗が虐められるようになって…主導してたのは俺が振った子で」
「…だから今も北斗に危害与えないように女の子侍らせてるってこと?」
「侍らせ…いやまあそうだな、」
そんなん言わなきゃ分かんないじゃないか
北斗はきっと樹をただの女好きだと思ってるっていうのに
本当は北斗を守るためなんだろ?
「屋上」
「あ?」
「屋上にいるから。早く行きなよ」
「行っても話すことねえよ…慎太郎が言って」
珍しく弱気な樹の頬を掴む
視線がようやく合えば揺れる瞳が不安を移していた
あんなに北斗は分かりやすいのに、樹は北斗の気持ちが不安だから
だから踏み込めないままだ
まあそれは北斗も同じなんだけど
似たもの同士の二人だな、なんて少し笑えてくる
「北斗が待ってるのは樹だから。早く行って」
「…お前のその顔ずりいよ」
気不味そうに笑った樹は教室から走って出て行った
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作者名:ぷりむら | 作成日時:2021年3月10日 15時