甘 “blue” ページ42
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side black
「俺が好きなのは北斗だけだよ」
甘い、
「北斗のことが一番だ」
甘くて、
「北斗もそうでしょ？」
甘すぎる、
君といるといつでも甘すぎて幸せで胸焼けする
その甘くて優しい温かさに包まれて、幸せなのに悲しくなる
だって俺は知ってるんだよ
俺に会う前にいつも左手薬指の指輪を外していること
うっすらと跡が残っているんだから
手を繋げばそこだけ少し窪んでいるんだから
「北斗は？俺だけ？」
ねぇ何でどうして
君は俺だけじゃないのに、どうしてそんな顔で俺だけだなんて言うの
そうは思うのに今日もまた弱い俺は君の甘さに流される
「…好き、大好き。樹が、一番。俺には樹しかいない」
「…いい子」
そう言って頭を撫でてくれるから、
俺の好きなキスをくれるから、
嬉しそうに一番好きな顔で笑ってくれるから、
それなら俺のこんな感情なんて置いておいてもいいのかもしれない
樹の指輪に刻まれたMAYUMIという名も、
偶然見えた携帯の待受の小さな子供も、
全てに目を瞑って今だけを感じれば
それなら、きっと樹は俺と会っている間は俺だけを愛して俺だけを甘やかしてくれるから
「…んっ、煙草クサ、」
「俺の匂いが北斗についていいだろ」
何がいいの、
樹の煙草の匂いを嗅ぐ度に会いたくてどうしようもない気持ちを抑えてるのに
「…っ、ちゅ」
「何でだろうな」
「何が？」
「何で北斗とのキスはこんなに気持ちいいんだろーな」
悔しくて口付けし返しても結局こんな言葉しか返ってこない
抱きついても、キスをしても、それ以上をしても、
樹に与える蜜の味は永遠に背徳感だけ
俺が樹からもらう甘さとは比べ物にもならない汚くて小さなものだけだ
「…樹、終わりにする」
「え？てか断定？」
「うん、決めた。終わりにする、もう。このままだと俺、壊れちゃう」
北斗が壊れたら俺困るよ、なんていつもの笑顔で抱きついてこないで
確かに俺が別れを告げるのはもう三度目だけど、
でも今度こそ本気だから
甘い蜜に絡め取られて結局樹の元に戻る自分とはもう、さよならしたいんだ
「…また落ち着いたら連絡してよ」
「…樹、さよなら」
「分かったって。連絡待ってるから」
信じてくれないみたいだけど、俺は本気だから
樹を絶たなければ俺はずっと幸せになれない
本当の蜜を吸えないんだから
「樹、大好きだったよ」
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
