偽物 “red” ページ41
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side red
「北斗つぎ風呂いいよ〜」
風呂から上がり声を掛けると、いつもは返ってくるはずの返事がない
変だなと思ってリビングを覗けば、大量の雑誌に埋もれながら顔を伏せる愛しい人
「どした？」
なんもない、
そんなふうに呟いてたけど何もない訳ないってこと、
これだけ長い時間一緒にいるんだからわかる
「仕事疲れちゃった？」
「ううん、仕事たのしい」
「じゃあどうしたの？」
優しく、なるべく北斗が警戒しないように
隣に座って頭を撫でながら聞けば、伏せられた顔が上げられた
「目腫れちゃう…」
顔を上げた北斗の目は赤くなっていて、ああ泣いたのか
親指で右目を撫でれば、びくっと動いてから焦点を俺に合わせた
「…分かんなくなった」
「何が？」
「なにが、どれが、本当なんだろうって。笑って踊って話して歌って演技して、って全部俺だけど」
でも、と呟いてから、だめなんかまとまってないとまた視線を下げる
「どれも全部北斗だよ」
「…ジェシーはそう言うと思った。でもね、違うよ。必要とされている俺と、本当の俺は違う」
「そっか、」
仕事頑張りすぎちゃったんだね
そんな気持ちを込めてまた頭を撫でれば、
子供扱いしてるでしょ？と上目がちに言われる
「おいで北斗」
「やだ」
「俺もやだ、おいで」
有無を言わさない、
そんな声色で言えば大人しく俺の膝の上に座る
「あったかいね」
「ジェシー風呂上がりたてであっつい」
「これが、ホントだと思わない？」
「ぇ、？」
よーく俺の顔を見て、
そんな気持ちを込めて北斗の頬を両手で掴み視線を合わせる
「今触ってるのが俺で、触られてるのが北斗。風呂上がりで暑いけど、北斗を抱きしめると心まであったまって嬉しい。俺は北斗が好きで、北斗は俺が好き。
ね？これが全部ホントのこと」
「難しいよ」
「難しくないよ。今北斗の目に映って感じるものは全部ホントのものだよ。ほら、今は何が見える？」
そう言って顔を覗き込めば少し視線を逸らすから
逸らさせないとでもいうように、頬をそのまま自分の方へ引きキスをした
「…ジェシーはあったかくてぷるぷる」
「え！俺のクチビルの感想！？」
「肌は白くてモチモチしてるけど、抱き締められたら逃げられないくらいしっかりしてる」
「ジム行ってるからね！」
これが全部本当だもんね
そう笑った北斗をさらに抱きしめた
さあ今日は2人でゆっくり寝よう
fin
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作者名：ぷりむら
| 作成日時：2021年3月10日 15時
