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屈曲花 “pink” ページ27



side black



“たいちゃん”


“ほくと”






そう、呼び合ったあの頃はもう無い



そう、呼び合えたあの環境はもう戻ってこない








「北斗、準備出来た?」


「うん、出来たよ」


「じゃあ…行こっか」




今日、俺は別の人のものになる



「北斗、好きだよ」


「北斗しか見えない」


「愛してるよ、北斗」


「俺と、結婚してください」




何度も愛を伝えてくれて、


何度も俺を好きだと言ってくれて、




そんな彼のことが俺も好き、それは勿論


だけどね、だけど


頭の中にまだ残ってるんだ





“ほくと、おとなになったらけっこんしよう!”


“けっこんってなーに?”


“すきなひととずっといっしょにいるってやくそくすること!”


“じゃあほく、たいちゃんとけっこんする!”




20年経って、他の人と結婚しちゃうよ


ねぇたいちゃん、いや大我?


迎えに来てくれないの?





扉が開いて真っ直ぐと彼へと続く道を見る


バージンロードを進みながら、大我の席を見た




勿論、空席のまま





あーあ結局来てくれなかったのか



「お兄さん、来てないみたいだね」



彼の隣に並べば、そう耳打ちされる


そうだね、と小声で返したけど


彼に一度も会わせてあげられなくて申し訳ない




仕方ないよ、大我は俺とすら会ってくれないんだから




大我の記憶から俺は消されてしまったのかな、



あの時の話だって消えちゃったのかな






威厳のある感じの神父が話し出す



「誓います」



彼が言う声が聞こえる





彼はきっと今この瞬間に俺が大我のことを思い出しているなんて知らない

から、



そんなに光に満ちた目で俺との愛を誓えるのかな、なんて





その輝いた目が自分には無くて欲しかったはずなのに、


気付けば大河の真っ暗な目を求めてしまってる





でもわかってるよ、


きっと今日他の人のものになるから、だからそう思うだけだよね?



ね?大我、



「…助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」




神様の前で嘘や誤魔化しは通用するのだろうか




…いや、何言ってんだ今更



大我がいなくなった時、



突然いなくなったあの時から大我のことを想う気持ちは捨てたじゃん、






「…はい、誓います」


「では誓いのキスを」



ベールが取られ、彼の顔が近付いてくる



もう、後戻りはできない

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作者名:ぷりむら | 作成日時:2021年3月10日 15時

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