種火 壱拾 ページ10
*
――真っ白な雪が、はらはらと舞っている。
煌々と焚かれた篝火が、演舞台を照らす。
演舞台に向けて大きく間口を広げたお屋敷の室内には、輝利哉様を始め、今日の演者の関係者が所狭しと座っている。
勿論煉獄家一同も、杏寿郎さん達の晴れ姿を見に来ている。
流石に双子は連れて来れなかったので、元
皆が揃うと輝利哉様から労いや感謝の言葉があって、それが開式の言葉となり、ヒノカミ神楽を舞う炭治郎君が演舞台へと登った。
◆
どの舞も、とても素晴らしかった。
薄闇に鮮やかに炎が浮かび上がった。
水飛沫は飛び、風が吹いた。
雷鳴は轟き、大地が鳴った。
霧は立ち込め、轟音が響いた。
獣は吠え、花びらが、蝶が舞った。
それはまるで、大自然の精霊が地上に降臨したかの様な激しさと美しさだった。
夕刻から始まった神楽の奉納だが、既に月は空高くに座して私達を明るく照らしている。
杏寿郎さん達の炎の舞は、全ての神楽のトリを飾った。
演舞台の真ん中で、杏寿郎さんと千寿郎君は祭具の刀を床に置き、静かに俯き片膝をついて座っている。
まるで炎の神様が、その身に憑依するのを待っているかの様に。
杏寿郎さんは刀を持ちゆっくりと立ち上がると、ダン、と床を踏み鳴らす。
続けて千寿郎君が立ち上がり、タン、と床を踏み鳴らす。
それを合図として音楽が始まり、炎の舞が始まった。
時に激しく、時に儚く。
時折額につけた
杏寿郎さん達の動きに合わせて、暗闇に刀の残像が二匹の炎の龍となって鮮やかに浮かび上がる。
誰一人声を発する者は居なかった。
瞬きする事すら憚られる様な、神聖な美しさだった。
舞台に一際大きな炎が上がる。
あれは、奥義・煉獄だ。
轟音と黒煙が上がり、山々にその音が反響した。
――やがて、辺りに静けさが戻って来る。
砂煙が風に流れて、誰も居なくなった演舞台が篝火に浮かぶ。
まるで、今までの時間全てが夢だったかの様。
気が付くと私の頬を涙が伝っていた。
桜寿郎も目を見開いて、膝の上でその小さな手をギュッと握り締め身動ぎもせずに演舞台を見ていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1255人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華(プロフ) - 柚葉様、コメントありがとうございます(*´ `)映画を初めて見た時の衝撃は忘れられません。あれから一年を経てやっと遊廓編を楽しみに見る事が出来る私になれたと思います。一年の時間をくれた煉獄さんに感謝と愛を捧げます(*//艸//)♡ (2021年12月24日 23時) (
レス) id: 484f89ba0b (このIDを非表示/違反報告)
柚葉(プロフ) - 私も１年間蹲ってました。煉獄さんは、私の心の中にいつまでも生き続けています💖 (2021年12月24日 19時) (レス) @page14 id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
華★ボードにお知らせあります(プロフ) - ビタミンSさん» ビタミンS様、お久しぶりです☺神楽の奉納はきっとこんな感じで行われたんだろうなぁと思いました。炎の舞を二人舞にしたのは願望入ってますが💦千君は絶対神楽を舞うと上手だと思います。いつもありがとうございます💕 (2021年10月2日 9時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
ビタミンS - 華さんお久しぶりです!!久々の小説良かったです！やっぱり皆さんが必死で習得した型を舞に変えるとか中々良かったです！炎は魅力的な所もありますね!!まさか双子ちゃんがいたのにもびっくり！ます��賑やかになりますね♪次回も楽しみにしてます!! (2021年10月2日 0時) (携帯から) (レス) id: 8e18fd10fc (このIDを非表示/違反報告)
華(プロフ) - ゆいさん» ゆい様、うわゎラブコールありがとうございますっ♡(๑′ฅฅ‵๑)とっても嬉しいです！不束者ですが宜しくお願いします←そんな風に言って貰ってすっごく嬉しいです(*´ `)わ、私も好きですっ…💕💕 (2021年10月1日 2時) (レス) id: e9517aa429 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：華 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=punishop
作成日時：2021年9月6日 7時
