白鯨の翼 (ページ48)

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【マルコ目線】

最近Aは、よく昔話をする
ここに流れ着いた時のことを考えりゃいい傾向だ

あの時のこいつは憔悴しきっていて、家族の話なんてできたもんじゃなかったからな

マルコ「イゾウのことだ、なんだかんだ元気にやってるだろ」
『だといいんだけどな、あいつ見た目の割に頑固で負けず嫌いだから』
マルコ「外面はいいんだ、どこでだって上手くやれる」
『だからだよ、どっかで本音吐き出さないと爆発するだろ」
マルコ「そんなに心配なら手紙のひとつでも書いてやれよい」
『いやそれは…、ほら、どのツラ下げてってぶん殴られてもおかしくないから…』
マルコ「細けえこと気にするような神経あいつが持ち合わせてると思ってんのかよい」
『…思ってない』
マルコ「なら問題ねえだろ」
『簡単に言うなよ、人の気も知らないで…』

なにをゴチャゴチャ考えてんのか知らねえが、お前からの手紙ならイゾウは手放しで喜ぶに決まってんだ

俺とAが喧嘩した時だってイゾウは常にAの味方をした
どれだけこいつが悪くてもだ

主人から離れて船に残る決断をしたのだってAが一枚噛んでるに決まってる
本人は全くその気がねえから真相はどうだか知らねえけどな

マルコ「明日、新しい封筒と便箋も買っとくか」
『イッ…！、だから書かないって…』
マルコ「俺のだよい、何勘違いしてんだ」
『お前…そう言うちっちゃい意地悪やめろ』
マルコ「ウジウジらしくねえこと言ってるからだよい」

Aは俺たちの中でも一等家族思いなやつだった
家族を傷つけるやつは誰であろうと容赦せず、どこであろうと飛んでいく
だからこそ上のやつはたいそう可愛がったし、下のやつは誰よりも慕った

そんなお前が下したあの決断を、一体誰が責めるって言うんだ